723 Kの溶融LiCl-KCl中においてカソードに酸素ガス電極、アノードにネオジム磁石電極を配置し、両極間に抵抗器を接続し、その際、選択的に溶出する希土類イオンの濃度をICPによって分析した。ネオジム磁石から溶出した希土類元素は酸素ガス導入開始から3時間後に多量に検出され、16時間後まで溶出量が増加した。一方、Feイオンは酸素ガス導入開始から浴中で確認されたが、その溶出量は3時間後まで微量であった。これは3時間後まではFeがほとんど溶出せず、希土類元素のみ選択的に溶出したことを示した。さらに、同様の溶融塩系においてガス電極とネオジム磁石電極との電池反応を検討するために、同じ反応面積を有する塩素ガス及び酸素ガス電極を用いてカソード分極実験を行った。酸素ガスの分極実験は、酸化リチウムを0.50 mol%添加した浴中で行った。また、酸素ガスを電解糟内に導入し、酸素ガス雰囲気とした。塩素ガスの分極実験は、電解糟内を3時間の定電流電解によって塩素ガス雰囲気にした後、行った。塩素ガス電極の平衡電位は3.56 Vを示した。一方、酸素ガス電極の平衡電位は2.16 Vを示した。この結果から、ネオジム磁石との電池反応では塩素ガス電極では酸素ガス電極より1.40 V程大きな起電力が得られることを実証できた。また、それぞれの平衡電位から約0.20 V卑な電位でのカソード電流値を比較すると、塩素ガス電極では3.36 Vで3.55 mA、 酸素ガス電極では1.89 Vで3.54 mAとなった。以上の結果を踏まえると、塩素ガス電極を用いた場合、ネオジム磁石との電池反応時に得られる電気エネルギーの増加が期待できる。また酸素ガス電極を用いた際、ネオジム磁石から溶出した希土類元素の一部は酸化物として沈殿するが、塩素ガスでは浴中に希土類イオンとしてとどまり、後に電解採取できることが示唆された。
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