研究課題/領域番号 |
18K11712
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松木 一弘 広島大学, 工学研究科, 教授 (30253115)
|
研究分担者 |
崔 龍範 広島大学, 工学研究科, 助教 (00457269)
佐々木 元 広島大学, 工学研究科, 教授 (30192595)
許 哲峰 広島大学, 工学研究科, 特任助教 (70620863) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 鋳放使用 / 環境対応型チタン合金 / 合金設計 / 浮揚溶解 / 変形挙動タイプ / 金属元素戦略 / 省エネルギープロセス |
研究実績の概要 |
環境対応、省エネルギープロセス型としてβ型Ti合金に着眼した。ユビキタス合金元素を使用し、d電子合金設計法つまりBoとMdの電子パラメータを援用し3種合金を提案した。合金組成は、Ti-5.5Cr-5.4Mn-5.1Zr-2.8Fe(低Mdtの高合金)、Ti-4.5Cr- 2.5Mn-1.1Al(低Bot合金)さらに、Ti-10.8Mo-2.3Sn-1.0A(高Mdtの低合金)であり、これらは、Bo-Md図で予測される主たる変形モードがすべり、双晶、マルテンサイト変態領域に位置する。これらのインゴットが浮揚溶解装置を用いて清浄な溶解と凝固により作製された。鋳放し使用を考えた時、浮揚溶解が唯一の組織制御過程である。Ti-5.5Cr-5.4Mnー 5.1Zr-2.8Fe合金は鋳放し状態でβ単相が観察され、溶質元素の偏析が最も大であった。一方、残り2種の合金はβ相とα"マルテンサイト相が析出したものであり偏析度合は小であった。鋳放し状態のTi- 5.5Cr-5.4Mn-5.1Zr-2.8Fe合金はすべり変形挙動を示し、950 MPaの0.2%耐力, 1000 MPaの引張強さ、8%の破断伸びが示され、溶体化処理したものより高性能であった。Hv硬さは320と240が鋳放しTi-5.5Cr-5.4Mn-5.1Zr-2.8FeとTi-10.8Mo-2.3Sn- 1.0Alで示され、溶体化処理のものは5 %低い値が示された。硬度と引張特性はよく相関していた。引張破壊単位を考えた時、一つの結晶粒がそれに当たった。したがって、微視的な溶質元素の偏析は、巨視的な引張特性を大きく左右しないことが分かった。すべりとマルテンサイト変態が主とした変形もモードである、Ti-5.5Cr-5.4Mn-5.1Zr-2.8Fe 、Ti-10.8Mo- 2.3Sn-1.0Alは鋳放使用が可能であると結論付けられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究に携わる代表者、分担者、さらに研究協力者の大学院学生が終始ディスカッションを交わしているため、新たな知見の発見や問題解決が早期に行われたためである。
|
今後の研究の推進方策 |
Bo-Md図で拡大化された新規組成領域を限定し、鋳放し状態で高性能化を目指すため、在来合金の組成と離れた領域を取り扱う。具体的には2.32eV以下の.低Md領域でBo値を3水準変化させた候補設計合金の組成位置がすでに決定され、合金組成の提案も完了したので、Bot値tを用いてTi中の元素拡散指標から合金元素の凝固偏析度合を推定し、鋳造プロセスの組織制御に備える。また、浮揚溶解装置で組織制御までを行って、インゴットを得て鋳放し状態の溶体化処理状態の試験片を作製し、組織調査と機械的特性評価を行う。さらに、鋳放し状態の高温腐食・耐食性評価、さらに組成-簡素化製造プロセス間の相関の一般化を行い、実用化に備える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
自動計測圧痕システムの購入を考えていたが、別の手段で代用できたため、本品の購入額の一部が残余した。
|