昨年度までに引き続き以下の項目について研究を進めた. (i)容器の材質,形状,加熱法の検討および収率の見積もり:昨年度に引き続き石英ガラス製の容器を用いた.酸化ガリウム試薬を用いたモデル実験で収率を向上させることを目的にした.実験の結果,単純な試験管形状の容器でも容器外へのガリウムの流出はほぼ0%となり,90%程度の収率が見込めた. (ii)チップLEDの加熱分解:昨年度と異なるチップLEDを用いた.昨年度までに見出している500 ℃付近の加熱にとどめ,その後震とうさせるプロセスが今回の試料でも有効であると確認した.以上のプロセスで取り出したガリウム含有基板を用いて,(i)で検討した容器で回収実験を試みた所,容器内部上方に酸化ガリウムとみられる析出物を確認した. (iii)酸化ガリウム粉末と樹脂との反応性の検討:酸化ガリウム粉末とポリエチレンテレフタラート(PET),ポリカーボネート(PC)樹脂との反応を調べた.新たに質量分析装置が付属した熱重量測定装置も併用して分析した.昨年度までの実験結果から,PETとPCを還元剤とした場合,グラファイトを還元剤とした場合より約100 ℃低い温度で酸化ガリウム粉末を還元させる事がわかった.今年度はPETおよびPCを事前に加熱し,液化の後炭化させた固体(乳鉢にて粉末化)が還元剤として機能するか調べた.この還元剤でも,グラファイトを還元剤とした場合と比べて酸化ガリウムとの還元温度が低下した.質量分析装置を併用した熱重量測定により,PCを事前に加熱して液化の後炭化させた固体からは酸化ガリウムが還元される温度域にても水素ガスが発生していることが確認された.この水素ガスの発生が還元温度の低下に関与していると推測された.
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