研究課題/領域番号 |
18K11716
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
井田 旬一 創価大学, 理工学部, 教授 (20409783)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 感温性ポリマー / 磁性ナノ粒子 / 重金属回収 / 電解酸化法 / 有機 /無機複合材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、当研究室で開発した直鎖状の感温性吸着剤(ポリマー)をシリカ被覆磁性ナノ粒子に修飾(固定化)することで、温度スウィングのみで重金属イオンを吸脱着でき、かつ重金属リサイクル後に磁性を使って迅速に分離回収可能な新規な感温性重金属吸着剤を開発することを目的としている。今年度の研究では、感温性ポリマー/シリカ被覆磁性ナノ粒子の調製法の確立を試みた。 まず、電解酸化法を用いてシリカ被覆磁性ナノ粒子を合成した。この時に、電流値を0.2-1.0Aの範囲で変えて合成した。フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、X線結晶構造解析(XRD)等で分析した所、いずれの条件でもシリカ被覆ナノ粒子が合成されたことが分かった。また、電流値0.6Aで粒子径が最小(比表面積が最大)となった。次に得られた試料の表面にシランカップリング剤等を用いてアンカー(アミノプロピル基等の官能基)を導入し、直鎖状の感温性ポリマー、poly (NIPAM-co-AA)を固定化した。熱重量分析(TGA)でポリマー固定化量の定量を行った結果、シリカ被覆していない磁性粒子と比較して、約3倍のポリマー固定化量を得られることが分かった。磁性ナノ粒子とシリカ被覆磁性ナノ粒子の粒子径分布測定を行った結果、シリカ被覆磁性ナノ粒子の粒子径分布が小粒子径へシフトしており、これによる比表面積の増加がポリマー固定化量の増加の原因と考えられる。また、感温性ポリマーの投入量を変えることで、任意のポリマー固定化量を得られることも確認できた。以上の結果より、今年度の目標であった、感温性ポリマー/シリカ被覆磁性ナノ粒子の調製法の確立は達成できたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
科研費申請時に目標とした「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」の本年度分はほぼ達成でき、次年度実施予定であった「Cu(II)イオンの吸着等温線の作成と吸脱着実験」についても前倒しで終えることができた。また、結果についても期待通りの効果を得ることができ、本プロジェクトの目標達成に大きく前進することができた。実験の進行の都合上、次年度実施分の前倒しを認め、本年度実施予定であった、TEM観察等の細かな点は未実施となっているが(次年度実施予定)、全体的には計画以上に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1年目については、ほぼ予定通り研究を進めることができた。2年目の各種重金属イオンを用いた、吸着材の性能評価、及び3年目の交流磁場を用いての誘導加熱実験については、これまでの研究で要素技術の蓄積とノウハウを有しているが、その後に実施予定となっている、項目(5)の「吸着する重金属の選択性向上」については、多くのトライアンドエラーが必要と考えられる。そのため、項目(4)までの研究を2年目で達成し、それ以降の研究に当たる部分をなるべく余裕を持って進められるよう、研究を計画・管理していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は電解酸化法で使用する電源とマルチメーターを購入予定であったが、他の先生から譲っていただいた機器で代替できた。また、当初予定より研究の進みが早く、国際学会発表を行うことができた。そのため、機器購入に使用予定だった予算をを、国際学会参加費や、消耗品購入等にまわすことができた。しかし、差分が若干残ってしまった。
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