本研究は、地元に大量に存在する廃棄物のホタテ貝殻粉末等抗菌物質を、本研究室で開発したトリアジンチオールとポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)という二つの有機分子の複合効果が期待できるテレケリックスに添加・充填させた新規抗菌材料開発を目的とする。これにより、医療用高分子材料などへの応用を目指す。具体的には、テレケリックスを有機高分子体にグラフト型化学結合させ、これにホタテ貝殻粉末等抗菌物質を充填させた複合材料を合成する。以上のように本研究は、地元の廃棄物を未利用バイオマス資源として利活用することにより、地元の環境問題の解決につなげるとともに、新規の機能性材料とするものである。最終の令和4年度には、次の実験・研究を行い、研究成果を得た。 A.テレケリックスを、有機高分子体のひとつであるポリ塩化ビニル(PVC)にグラフト型化学結合させた材料を調製し、フィルム化したものにホタテ貝殻粉末充填を条件を変えて行った。具体的には、ホタテ貝殻の粒子径を3種類、焼成温度も3種類、充填率も3種類とし、各種の条件の貝殻粉末について、X線回折を行い、また、貝殻粉末をグラフトPVCへ充填したものについては、接触角測定・抗菌性試験を行った。その結果、強い抗菌性を生じる酸化カルシウムが最大に生成する焼成温度や抗菌性が最も高くなる粒子径・充填率についてわかった。 B.テレケリックス末端を従来のものと変え、また、テレケリックス中のアルキル基をいろいろと変えて、ガラス板同士の接着剤としての用途を検討した。その結果、従来のものより少し親水性の度合いを低くしたテレケリックスが、乾燥時間が短くなり、接着性も増すことがわかった。 これ以外にも、多くの知見を得た。今までの研究結果を一部まとめた投稿論文が掲載された。
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