研究課題/領域番号 |
18K11720
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
遠藤 智明 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (60369915)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 三次元ボールミル / バイキャップ型包接錯体 / シクロデキストリン / フラーレン / アンモニア合成 / ジルコニア容器 |
研究実績の概要 |
1)昨年度導入した3次元ボールミルを用い、C60のγ-シクロデキストリンのバイキャップ錯体の合成には、容器が直径8cmの底つきジルコニア容器に対し,原料の仕込み比が、当量比でC60:γ-シクロデキストリン1:4.5(0.144g:1.167g)を投入し、直径1.5㎝のジルコニアボール20個を用いて、90分間、水平200rpm、垂直400rpmでの攪拌を行う反応条件が最適条件であることを見出した。現在さらに様々な反応条件の検討を進めているが、ある反応条件下でこのバイキャップ錯体を合成すると、この錯体の特定の波長の光の吸収が急激に変化するという現象が見出された。この現象は、光の吸収に対応するある特定のエネルギー間の量子遷移確率の変化に起因する現象であると考えられ、追試験とともに、これまで知られていない特異的な知見であるのかどうかについて、調査を行っている。 2)3次元ボールミルの反応容器の新容器として、胴長ジルコニア容器を新たに開発した。新容器は衝突力が強化されたと思われるが、科学的に説明できるデータを収取中である。 3)昨年開発したテフロン容器を用いて様々な有機合成を行い、化学プラントでの大量生産方式から、必要な場所で必要量を生産する省エネルギー化学産業へ変革するパラダイムシフトを行うための反応検討も行っている。今年度は、有機ELの材料であるMEH-PPVをテフロン容器で合成できることを見出した。それ以外にも様々な反応について取り組んでいるが、3次元ボールミルは、現在の装置では光が必要な反応では反応が進まないと考えられ、これまで知られている有機化学反応の反応機構を再評価できる装置であると考えている。本研究は、高校の教科書にもでてくるオストワルト先生が、100年前に、メカノケミストリは物理化学の一分野であると明言していたことを、改めて実証しているのではと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シクロデキストリン効能でできている。本科研費により、昨年度3次元ボールミルの実機を導入できたことで、C60のγ-シクロデキストリンのバイキャップ錯体の最適な反応条件を見出すことができた。これにより触媒を安定的に生産し、真空凍結法を用いて触媒を得るための一連のプロセス、評価方法が確立でき、触媒の生産が行えるようになった。また、触媒の生成条件を得るための反応過程において、ある条件で合成された錯体が、光の吸収に関して、ある特定のエネルギー間の量子遷移確率のみが変化しているのではと考えられる現象が見出され、新たな科学的な発見なのかどうかについて調査中である。 装置自身が世界で唯一の装置でもあり、有機化学反応に応用するための反応容器の材料特性、形状の検討を行い、新たな反応容器を装置に実装することができた。新たな容器の開発し、有機合成にも適用可能な装置としたことで、3次元ボールミルを、溶液状の物質を出発物とする有機合成反応はじめ、その適用範囲を拡張することができた。これにより、有機ELの代表的な材料であるMEH-PPVを、我々の三次元ボールミルを用いたメカノケミストリ手法によって合成できた。 3次元ボールミルの有機合成への適用は、世界でも初めてであり、我々の目指す触媒合成に利用するのはもとより、新たな有機合成反応を行うためのメカノケミストリの装置として、さらなる大きな発展が見込める。
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今後の研究の推進方策 |
高効率なアンモニアの合成プロセスの研究にシフトし、新規なアンモニアの製造プロセスを確立するための検討を行う。研究内容としては、アンモニア合成の際に添加している還元剤の種類、条件の検討、温度、雰囲気の影響など、まだまだ検討すべき因子が数多く存在するが、それらの組み合わせを含めて詳細な検討を行って行く。また、ある特定の条件で合成された錯体に関して、構造、物性の両面から実験を行うと同時に、文献調査を行い新規な現象なのかどうかを検討する。 3次元ボールミルが、有機合成に対して大きなポテンシャルを秘めていることが判明したので、新たな有機合成のパラダイムシフトに繋がる知見を得ていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
春の日本化学会への学会出張と反応装置の改良に費用を使用する予定にしていたが、COVID-19の影響により3月の年度末の学会が中止になったため出張旅費が使用できなかったことと、COVID-19に対する学内での対策会議などに追われ、2,3月の実験が進展しなかったことから、装置の改良のための設計、発注ができなかったため一部予算が消化できなかった。
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