研究課題/領域番号 |
18K11723
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
舘 秀樹 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (60359429)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ポリイミド / 粘着剤 / 易剥離 / 易解体 / 耐熱性 / 縮合系高分子 |
研究実績の概要 |
今年度は、高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を中心に研究を進めた。様々な原料を縮合反応させることで粘着性を有するポリマーの作製を行った。剛直な構造である芳香族高分子に、柔軟性の高いシリコーンや脂肪族架橋構造、環動高分子材料などの柔らかい骨格を導入することで、粘着特性発現に必要なミクロ相分離構造を形成し、耐熱性と粘着特性(粘着力、凝集力、保持力等)を両立させた粘着剤の作製を検討した。その結果、主鎖骨格にシリコーン骨格を有するジアミンと酸無水物を組み合わせることで、粘着性と製膜性を兼ね備えたポリマーの作製に成功した。得られたポリマーは、250度以上の耐熱性を示した。 得られたポリマーをNMP(N-methylpyrrolidone)に溶解させ、アプリケーターを用いてポリイミドフィルム上に塗工し、粘着層膜厚30 μmの粘着フィルムを得た。得られた粘着フィルムを用いて、PETおよびSUS基板に対し180度剥離試験を実施した。その結果、この粘着フィルムの粘着強度はPETに対して3.19 N/20mm、SUSに対して3.02 N/20mmを示すことがわかった。さらに、250度2時間の加熱を行い、その後180度剥離試験を実施した結果、粘着強度の変化は見られず、約3 N/20 mmの剥離強度を示すことが明らかとなった。 また、粘着剤への解体性付与については、解体性を有するモノマーの合成とポリマー化に着手し、合成を実施した。現在、ポリマー合成の条件について詳細な検討を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請書に基づき、以下の2点について研究をすすめ、当該年度の目標を達成することができた。 (1)高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発 ジアミノシリコーンと酸二無水物を組合せ、粘着性と耐熱性を兼ね備えたポリマーの作製を実施した。得られたポリマーを塗工した粘着フィルムは、PETおよびSUS基板に対し、250度2時間の加熱後に約3 N/20 mmの剥離強度を示す粘着剤を作製することができた。
(2)粘着剤への解体性付与 また、粘着剤への解体性付与については、解体性を有するモノマーの合成とポリマー化に着手し、合成を実施した。現在、ポリマー合成の条件について詳細な検討を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き(1)高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を進め、更なる機能化や最適化を実施する。PETおよびSUS基板に対し、250度2時間の加熱後に約3 N/20 mmの剥離強度を示す粘着剤を作製することができたため、更なる耐熱温度および粘着強度の向上を目指す。 また、得られた芳香族高分子粘着剤への(2)解体性付与を中心に研究を行い、解体能と高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を進める。具体的にはアシルオキシムや側鎖反応性の置換基を有するモノマーの合成およびポリマー化により解体能の導入を行う。 さらに、次年度の後半は、(3)潜在性化合物の合成・選定を行い、芳香族高分子粘着剤と組み合わせることで易解体特性の評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 計画していた消耗品について残額等が生じたことや当初予定していた学会へ参加できず旅費およびその他経費の残額が生じた。 (使用計画) 次年度、物品費として使用する。
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