研究課題
持続的で効率的な生態系サービスの利用には,人為的撹乱と生態系サービスの関係を科学的に調査し,撹乱後のサービスの変化を予測する必要がある.本研究は「山菜」を材料にして,人為的撹乱に対する山菜の応答を調べ,生態系サービスとしての山菜の利用可能性(ここでは,主に山菜の生産量)の変化を予測することを目的とする.この目的の達成のために,基礎生態学で培われたアプローチを用いた大規模な野外調査と操作実験を,北海道大学天塩研究林で実施した.北日本特産の人気の高い山菜であるチシマザサのタケノコを対象として,まず,タケノコの生産性を決める環境要因について解析した.その結果,生育地の「傾斜角度」がタケノコの生産性を決める第一の地形要因(急傾斜の場所ほどタケノコの生産数は少なく,太いタケノコが生産される)であった.さらに,昨年までの結果から,チシマザサではタケノコを収穫すると翌年にタケノコの生産性が高まることが明らかになっている.そこで,収穫に応答したタケノコの生産性の強化がどのような環境要因に影響されるかを探索するため,調査プロットの半数でタケノコを収穫し,それらのプロットで収穫の翌年に生産されるタケノコの数を,収穫しなかった場合のタケノコの生産数の予測値と比較した.「収穫しなかった場合の予測値」に対する「収穫した場合のタケノコの数」(収穫後の実測値 / 収穫なしの予測値)は,急傾斜の場所ほどが大きかった.つまり,チシマザサでは,収穫に応答した補償反応の強さ(収穫後のタケノコ生産の強化)は,生育地の傾斜角度に規定されることが示唆された.タケノコ以外の山菜で,翌年の生産性に及ぼす収穫の影響を調べるため,タラノメの収穫実験を実施した.収穫した場合の翌年の新芽の発現率は76%で,収穫しなかった場合(84%)と有意に異ならなかった.タラノメでは,収穫の影響は強くないと思われる.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Forest Research
巻: 26 ページ: 54-61
10.1080/13416979.2020.1857000
PLOS ONE
巻: 15 ページ: e0243089
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