研究課題/領域番号 |
18K11725
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
永松 大 鳥取大学, 農学部, 教授 (20353790)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人為攪乱 / 鳥取砂丘 / 海浜植生 |
研究実績の概要 |
海浜生態系は,都市域などに限らず自然豊かとされる地域でも変容が著しい。このことが海浜生態系が持つEco-DRR機能の発揮に向けた課題の一つであり,海浜砂丘と海浜植生の安定性評価が本課題の主題の一つである。2018年度は主に過去100年にわたる長期の土地利用の安定性について検討した。2019年はこれに引き続き,年変化ともいえる短期の海浜植生変化について,2016年夏と2018年夏の2年を対象に検討した。 鳥取砂丘では2017年11月にスマートフォン位置情報ゲームのイベントが開催され,3日間で9万人の観光客が集中的に訪れた。本課題では,この際に訪れた多数の観光客による鳥取砂丘内への攪乱強度をかつ簡易に評価し,一時的ではあるが,鳥取砂丘全体に,これまでになく踏圧が増加したことが確認された。この前後,2016年と2018年にドローンで上空から撮影した画像と砂丘での植生調査により,2年間の鳥取砂丘の植物群落の変化を解析した。その結果,2016年から2018年にかけては植物出現頻度や全体面積には顕著な変化はみられなかった。在来の砂丘植物に比べて除草対象種の植物出現頻度の減少幅が大きい傾向がみられ,継続的な除草が影響していることが考えられた。砂丘の植物群落は全体としてはゆるやかな減少傾向であり,ひきつづき国の天然記念物に指定時のすがたに近づきつつあると思われた。2016年から2018年にかけて砂丘内から見られなくなった植物種はなく,短期的には植生変化は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進展しているが,海浜砂丘は日射をさえぎるものがないため,野外調査にあたり夏季の熱中症対策にとりわけの配慮が必要で,調査が制限されてしまう点が問題である。新型コロナウイルス対策の影響で調査にさらに制限が生じることも危惧される。
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今後の研究の推進方策 |
調査地である鳥取砂丘海岸や周辺の比較調査地は研究代表者の至近距離にあり,フィールド研究で最も重要な調査時間の確保に関してたいへん有利な状況である。天然記念物鳥取砂丘で必要な国,地元自治体の調査許可手続きにも慣れている。関係組織との連携もとれていることから,これまでの鳥取砂丘海岸での研究蓄積を活かして今後の研究推進を図る。 解析・考察面でさらなる研究推進をはかる点からは,一緒に研究を進めてくれる学生の確保など,研究体制の構築が課題である。2020年は特にこの点が問題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表旅費として支出を計画していた日本生態学会大会(2020年3月開催)が,新型コロナウイルス対応のため規模縮小とweb開催になったことが主要因である。次年度の調査において乾電池類等,野外調査に必要な消耗品にあてることを計画している。
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