研究課題/領域番号 |
18K11725
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
永松 大 鳥取大学, 農学部, 教授 (20353790)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人為攪乱 / 鳥取砂丘 / 海浜植生 |
研究実績の概要 |
本研究では海浜砂丘が持つEco-DRR機能の発揮に向けて,鳥取砂丘海岸のさまざまな立地を対象とした海浜砂丘と海浜植生の安定性評価を行っている。このうち、2020年には研究期間5年スケールでの年変化として、天然記念物鳥取砂丘内に設定した調査区において,人の踏圧による植生への影響を検討した。 鳥取砂丘は観光可能な日本最大の砂丘として有名で,年間の入込客のべ人数は100万人にのぼる。このような多くの人の出入りにともなって植生が踏みつけられることにより枯死が増え、砂丘の生態系に影響を与えていることが考えられる。しかしこれまでは、人の出入りが多く立ち入り規制ができないことから,人の踏みつけによる植物への影響は定量的には評価されてこなかった。このような状況下,鳥取砂丘内では昆虫の希少化が問題となり,エリザハンミョウの生息地保護柵が設けられた。立ち入り規制の柵が鳥取砂丘内に設けられるのは初めてで,本研究ではこの機会を利用し,砂丘地の踏みつけの有無による植物への影響を明らかにした。柵周辺の10地点,柵内外合計20の調査枠でコウボウシバの草高,葉長,健全度の調査を行い,柵内と柵外のコウボウシバの状態の比較を行った。7月,8月ともに柵外の方が,草高が低くなり,葉長が短くなった。健全度についても柵外の方が枯死した葉や重度の傷を負った葉が多く見られた。葉数は7月と8月に比べて柵内の葉数が増加しており,葉数が増加した8月でのみ柵内と柵外での葉数の差がみられた。踏みつけは植物の生育状態に大きな影響をもたらしているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主たる調査場所は鳥取砂丘であり、出張の必要が無いことから、野外調査はおおむね順調に進展してきた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、他の砂丘地調査は進まなかった。 鳥取砂丘の調査については、国立公園特別保護地区かつ国指定天然記念物であるため、許可申請に日時を要する点に留意する必要がある。実際の調査にあたっては日射をさえぎるものがないため,近年は特に、夏季の熱中症対策にとりわけの配慮が必要で,研究補助者による調査が制限されてしまう点が課題である。2020年は、新型コロナウイルス感染対策の影響で、鳥取砂丘でも調査にさまざまな制限が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
調査地である鳥取砂丘海岸や周辺の比較調査地は研究代表者の至近距離にあり,フィールド研究で最も重要な調査時間の確保に関しては有利な状況である。地元関係組織との連携もとれていることから,これまでの鳥取砂丘海岸での研究蓄積を活かして今後の研究推進を図る。 解析・考察面でさらなる研究推進をはかる点からは,一緒に研究を進めてくれる学生の確保など,研究体制の構築が課題である。2021年は特にこの点が問題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表旅費として支出を計画していた日本生態学会大会(2021年3月開催)が,新型コロナウイルス対応のためオンライン開催になったことが主要因である。次年度の調査において乾電池類等,野外調査に必要な消耗品にあてることを計画している。
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