研究課題/領域番号 |
18K11725
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
永松 大 鳥取大学, 農学部, 教授 (20353790)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海岸砂丘 / 海浜植生 / 植生保全 |
研究実績の概要 |
本研究では海浜砂丘が持つEco-DRR機能の発揮に向けて,主に鳥取砂丘海岸を対象とした海浜砂丘と海浜植生の安定性評価を行っている。このうち、2021年には天然記念物鳥取砂丘全域に設定した調査区において,海浜植生による表層砂への窒素と炭素の蓄積状況計測を実施し,植生との関係について検討した。 鳥取砂丘内に100 m間隔で139か所の調査点を設置し,夏季に植生調査と砂採取を行った。表層の砂試料中に含まれる全窒素と,態別炭素として有機炭素,元素状炭素,炭酸塩炭素の含有率を測定した。塩分指標として電気伝導度も測定し,植被率との関係を解析した。植生調査では被度20%以下が全調査点の70%を占めたが,丘間低地や周囲のクロマツ林では,被度80%が3地点で記録された。全窒素濃度は全地点で極端に低く,砂丘内の蓄積はごく少なかった。全炭素濃度の平均値も同様に低かったが,クロマツ林内では他より2倍以上高かった。有機炭素の空間分布は全炭素に類似していた。炭酸塩炭素濃度と電気伝導度は海岸で高かった。植生被度が高い地点では炭素/窒素が相対的に高い傾向はあったがその相関は弱く,砂丘内には著しく蓄積が進んでいる場所は見られなかった。 そのほか,植生が踏みつけられることにより枯死が増え、植物の生育状態に影響を与えている状況に関して論文発表した。鳥取砂丘の自然に関して蓄積された学術的知見を紹介する英語本「Tottori Sand Dunes」を編集し,出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主たる調査場所は鳥取砂丘であり、勤務地に近く出張の必要が無いことから、野外調査はおおむね順調に進展してきた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により他の砂丘地調査は進まなかった。 鳥取砂丘の調査については、国立公園特別保護地区かつ国指定天然記念物であるため、許可申請に日時を要する点に留意する必要がある。海岸砂丘は風が強く,日射をさえぎるものがないため,天候が調査の支障となる。近年はとりわけ夏季の熱中症対策に特段の配慮が必要で,研究補助者による調査が制限されてしまう点が課題である。2021年は、新型コロナウイルス感染対策の影響で、鳥取砂丘でも調査にさまざまな制限が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
調査地である鳥取砂丘海岸や周辺の比較調査地は研究代表者の至近距離にあり,フィールド研究で最も重要な調査時間の確保に関しては有利な状況である。地元関係組織との連携もとれていることから,これまでの鳥取砂丘海岸での研究蓄積を活かして今後の研究推進を図る。 計画最終年にあたり,解析・考察面でさらなる研究推進をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表旅費として支出を計画していた日本生態学会大会(2022年3月開催)が,新型コロナウイルス対応のため2月になってオンライン開催になったことが主要因である。次年度の調査における野外調査消耗品および解析ソフトウェアにあてることを計画している。
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