本研究では海浜砂丘が持つEco-DRR機能の発揮に向けて,主に鳥取砂丘海岸を対象とした海浜砂丘と海浜植生の安定性評価を行ってきた。最終年にあたる2022年は,鳥取砂丘でこれまで続けてきた砂移動と植物量のモニタリングを継続するとともに,砂丘の除草管理と砂丘植生の関係をとりまとめて,成果を一般販売書籍の分担執筆原稿として発表した。 2022年は,鳥取砂丘内に100 m間隔で設置した139カ所の調査点において,毎月,砂移動量調査を継続的におこない,夏季に植生調査と足跡数調査を行った。これらをくみあわせて砂移動量と植物の関係を解析した。その結果,植物が生育している場所は砂が堆積傾向にあることが明らかとなった。相対的に砂移動量が多い場所に生育している植物はコウボウムギであった。外来植物は砂移動量が少ない場所に生育する傾向がみられた。これらのことから,海岸砂丘では特に在来植物が砂を補足して堆積させる機能を持ち,砂丘のEco-DRR機能維持と向上に貢献している可能性が考えられた。 本課題では,砂丘内に初めて設置された昆虫の保護柵を活用した年変化研究を推進し,砂丘の植物が踏みつけられることにより枯死が増え、植物の生育状態が影響を受けている状況を詳細に解析し,論文発表した。砂蓄積など過去数十年間の記録を解析し,Eco-DRR機能を含めた鳥取砂丘の自然生態系に関する学術的知見をとりまとめて,海外向けに紹介する書籍「Tottori Sand Dunes」を編集し,2022年春に出版することができた。これらにより,海岸砂丘がもつEco-DRR機能の検証をすすめることができた。
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