研究課題/領域番号 |
18K11727
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三宅 洋 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (90345801)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 応用生態工学 / 河川生態学 / 群集生態学 / 攪乱生態学 / 出水攪乱 / 流量変動 / 都市河川 / 河川性底生動物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,流域の都市化にともなう流量変動改変が河川性底生動物群集の動態に及ぼす影響を解明することである.具体的には,(I)継続的観測により,都市河川の流量変動特性を明らかにする,(II)経時的調査により,都市河川の環境・底生動物相を把握する,(III)得られたデータの解析により,都市化-流量改変-底生動物動態間の関係を解明し,都市河川の管理手法を提案する,の3点を遂行することにより研究目的の達成を目指している。 本年度は,まず,研究計画の「(1)調査地設定」(上記(I),(II),(III)に関連)を実施した.愛媛県道後平野を流れる流域面積5~10 km2の低平地河川を対象としてGISを用いた地理情報解析を行い,12地点の流域の都市面積割合が大きく異なる調査地(0-65%)を設定した.なお,申請時より調査地点数が減少しているのは,交付額の減額のためである.続いて,「(2)流量観測・分析」(上記I)に関連)を開始した.河川管理者(愛媛県)からの河川占用許可の取得に時間を要したが,11月には全調査地に水位ロガーを設置した.以降,現在も水位観測と,これにともなうデータ整理および分析を進めている.さらに,「(3)底生動物調査・分析」(上記III)に関連)を行った.水位観測の開始にともない,流量変動状況に応じて3回の調査を実施した.現在はサンプル処理とデータ整理・分析を進めている. 以上(1)~(3)により得られたデータに基づき,「(4)データ解析と河川管理手法への提案」を行う.この結果により,最終的には,都市河川の保全・再生に応用可能な実証的データを提供するとともに,遊水施設の整備方法など,動的な視点を導入した都市河川の管理手法を具体的に提案する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に平成30年度での実施を計画していた,「(1)調査地設定」を完了した.流域の都市面積割合が大きく異なる地点を選択することができている.「(2)流量観測・分析」は,開始時期に多少の遅れはあったものの,トラブルなく観測を継続している.初夏から秋にかけての出水期に充分なメンテナンスを行うことにより令和元年10月まで1年間のデータ収集をすることができるだろう.「(3)底生動物調査・分析」についても既に調査を行っており,サンプル処理とデータ整理も順調に進行している.今後は得られたデータを順次分析することにより,当初計画どおりの令和2年4月までに「(4)データ解析と河川管理手法への提案」のうちデータ解析を完了する予定である. 予備的なデータも含め,以上の成果に関連する内容の一部は既に2件の学会発表として公表しており,1編の学術論文を投稿中である.今後もデータの蓄積にともない積極的に成果を公表していく. 以上を総合すると,本年度は,申請時の研究計画にあった事項にすべて取り組んでおり,いずれもトラブルなく進行していることから,達成度は「おおむね順調に進展している」と評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,まず,現在すでに観測体制が確立している「(2)流量観測・分析」を完了させる.大規模出水の発生などを見越した準備と十分なメンテナンスにより,令和元年10月まで確実に観測を継続する.流量変動データの蓄積にともないデータ整理を行う.同じく調査を開始している「(3)底生動物調査・分析」についても次年度内に全調査を完了させる.底生動物サンプルの蓄積にともないサンプル処理をすすめ,令和元年12月までに全てデータ化する.これらにより得られた流量変動データおよび底生動物データと,地理情報解析による流域特性データにもとづき,令和2年3月までに「(4)データ解析と河川管理手法への提案」のうちデータ解析を完了する.これにより,助成期間が終了する令和3年3月までに研究目的の達成を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額106,801円が生じたのは,主に今年度の底生動物の調査機会が当初計画よりも少なかったことによる.これは河川管理者(愛媛県)からの河川占用許可の取得に時間を要したためである.結果として,試料採取関連消耗品,環境計測関連消耗品,資料処理関連消耗品,資料保存関連消耗品の消耗が少なく,物品費による使用が当初計画よりも少額であった.また,本研究計画で使用する既有の実態顕微鏡およびパーソナルコンピュータの修理費が生じ(その他として計上),3月に予定していた学会参加への出費を控えたため,旅費についても余剰が生じた. 底生動物調査の機会数は今年度の不足を補うために次年度に多くなるため,発生した次年度使用額は,すべて次年度の物品費に充てる.このため,最終的には当初計画していた費目配分と大きく変わることなく助成事業を完遂できる予定である.
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