研究課題/領域番号 |
18K11727
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三宅 洋 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (90345801)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 応用生態工学 / 河川生態学 / 群集生態学 / 攪乱生態学 / 出水攪乱 / 流量変動 / 都市河川 / 河川性底生動物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,流域の都市化にともなう流量変動改変が河川性底生動物群集の動態に及ぼす影響を解明することである.具体的には,(I)継続的観測により,都市河川の流量変動特性を明らかにする,(II)経時的調査により,都市河川の環境・底生動物相を把握する,(III)得られたデータの解析により,都市化-流量改変-底生動物動態間の関係を解明し,都市河川の管理手法を提案する,の3点を遂行することにより研究目的の達成を目指している。 本年度は,昨年度に引き続き,調査計画の「(2)流量観測・分析」(上記Iに関連)を実施した.7月19日および8月15日に発生した出水を捕捉するなど,順調に流量観測を継続している.得られたデータを適宜整理し,各調査地の流量変動特性について先駆的な知見を得ている. 同様に,「(3)底生動物調査・分析」(上記IIに関連)を実施した.流量変動にともなう3回の調査を行い,底生動物およびその生息場所環境に関する現地調査を完了した.生息場所環境に関するデータ整理,底生動物サンプルの処理およびデータ整理も一部を残して完了している. 以上(1)~(3)により得られたデータに基づき,「(4)データ解析と河川管理手法への提案」(上記IIIに関連)について現在予備的な解析を進めている.この結果により,最終的には都市河川の保全・再生に応用可能な実証的データを提供するとともに,遊水施設の整備方法など動的な視点を導入した都市河川の管理手法を具体的に提案する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画していた「(1)調査地設定」を完了した.流域の都市面積割合が大きく異なる地点を選択することができている.「(2)流量観測・分析」についても,開始時期に多少の遅れはあったもののトラブルなく観測とデータの整理・分析を完了している.この観測は現在も継続しており,当初予定していたよりも豊富なデータを収集できる見通しである.「(3)底生動物調査・分析」も既に調査を完了しており,サンプル処理とデータ整理も順調に進行している.今後は得られたデータを順次解析することにより,次年度中に「(4)データ解析と河川管理手法への提案」を完了できる予定である. 予備的なデータも含め,以上の成果に関連する内容の一部は既に2編の学術論文,10件の学会発表(内,本年度は8件)および1冊の書籍として公表されている.今後もデータの蓄積と解析の進行にともない積極的に成果を公表していく. 以上を総合すると,本年度は,申請時の研究計画にあった事項にすべて取り組んでおり,いずれもトラブルなく進行している.相応の研究成果も発表されていることから,達成度は「おおむね順調に進展している」と評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は,まず,「(3)底生動物調査・分析」のうち残る底生動物サンプル処理を完了し,データの最終的な整理を行う.これにより完成したデータベースにもとづき「(4)データ解析と河川管理手法への提案」を進める. 具体的には,まず,「(1)調査地設定」,「(2)流量観測・分析」および「(3)底生動物調査・分析」によりそれぞれ得られるデータに基づき,都市化-流量改変-底生動物動態間の関係を統計的に解析する.この結果より解明される要素間の因果関係に基づき都市河川の管理手法を具体的に提案する.助成期間が終了する令和3年3月までに研究目的の達成を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の23,630円が生じたのは,主に今年度の物品消耗が少なく消耗品費が前年度の繰越金(106,801円)を加えた額よりも小さかったことによる.さらに,サンプル処理が順調に進行したため人件費が当初申請額より37,500円だけ少なかった. 他方,旅費については研究成果が豊富であったため発表件数が予想より増加して当初計画より112,426円の増額となった.また,レンタカー代および論文投稿料によりその他の支出が19,127円だけ多かった. これらの差し引きとして生じた繰越金は,多くのデータが得られていることを鑑み,情報処理関連の消耗品の購入費として全て次年度の物品費に充てる.また,コロナウイルス感染症の拡大による各種学会の開催中止により生じる余剰額についても情報処理関連の消耗品購入や他の学会参加費に充てる見通しである.このため,最終的には当初計画していた費目配分と大きく変わることなく助成事業を完遂できる予定である.
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