最終年度である今年度は、当初計画の「(2)流量観測・分析」および「(3)底生動物調査・分析」を完了し、「(4)データ解析と河川管理手法への提案」を実施することにより最終成果を得ることができた。 流量データ解析では、2019年に現地測定した流量データから多数の水文指標を算出し、うち4指標について12調査地間で著しい変異が見られることを把握した。同時に行ったトレーサー法およびPfankuch法による河床不安定性評価の結果も含めた解析から、これら攪乱指標は河川環境特性と関係しており、小河川ほど流量変化率大きいこと、流域が花崗岩に広く覆われて河床砂礫サイズが小さい河川ほど河床不安定性が高いことが明らかになった。 底生動物データの分析により、都市河川ではユスリカ科のような汚濁耐性の高い分類群が優占していたものの、ヨコミゾドロムシのような絶滅危惧種も多く生息していることが明らかになった。計4回の調査データより、底生動物の個体数と分類群数は7月の大規模出水により大きく減少したが、10月までに回復していることが示された。続く統計解析により、河床不安定性の高い河川ほど底生動物の個体数と分類群数が少なく、分類群数の変動係数や非存続性が高いことが明らかになった。 以上より、山地の自然河川と同様に、都市河川でも出水攪乱の発生が底生動物群集の動態を強く制御していることが明らかになった。ただし、計画時点で想定していた都市化による流量変動激化の影響は明瞭ではなく、流域地質と河床砂礫サイズに起因する河床不安定性の変異が河川間の群集動態の変異と強く関連していることが明らかになった。よって、都市河川における生態系保全では、河道の拡幅や河岸植生による流れ避難場所の造成が有効であることが示唆され、特に巨礫の設置などによる局所的な安定河床の創出が具体的な保全策として考えられた。
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