研究課題/領域番号 |
18K11728
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
比嘉 基紀 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (60709385)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 森林植生帯の広域分布 / 暖温帯針葉樹林 / 種分布予測モデル / 夏期降水量 / 多項ロジットモデル / 中間温帯林 |
研究実績の概要 |
日本の森林植生は,亜高山帯常緑針葉樹林,冷温帯落葉広葉樹林,中間温帯林,モミ・ツガ林,常緑広葉樹林,亜熱帯林に区分され,各植生帯の境界は温量指数(暖かさ・寒さの指数)に良く対応することが明らかにされている。しかし,日本の森林植生帯研究では,モミ・ツガ林の気候的な位置づけが明確にされておらず,また各植生帯の分布と気候条件の関係について,統計解析などによる客観的な評価も行われていない。本研究の目的は,高解像度の植生図と最新の分布予測モデルをもとに,日本の森林植生帯の分布構造の検証を行うことである。解析データには,環境省の自然環境基礎調査(第6~7回)の四国地方の1/25,000植生図を使用した。凡例をもとに,6つの自然植生(常緑広葉樹林,暖温帯針葉樹林,冷温帯針葉樹林,落葉広葉樹林,亜高山帯広葉樹林,亜高山帯針葉樹林)を抽出し,3次メッシュごとの分布データを作成した。植生図とデジタル標高モデル,メッシュ気候値(暖かさの指数,最寒月の月最低気温の平均値,夏期降水量,冬期降水量)を重ね合わせ,多項ロジットモデル(ソフトマックス回帰)により,植生分布モデルを構築した。解析の結果,暖かさの指数と最寒月の月最低気温の平均値のレンジの組み合わせでは,暖温帯・冷温帯針葉樹林の分布確率は常緑広葉樹林や冷温体落葉広葉樹林の分布確率よりも小さかった。しかし,夏期降水量が多い地域では,暖温帯・冷温帯針葉樹林の分布確率が上昇することが明らかとなった。検証データによる正答率は62.55%で,地形要素を加えても精度はそれほど改善されなかった。このことから,森林植生帯の広域分布は,大部分が気候要因で説明されるものの,局所的な要因(例えば,複雑な山岳地形)も影響している可能性が示唆された。以上のことから,暖温帯・冷温帯針葉樹林は,太平洋沿岸の降水量の多い地域に位置づけられる植生帯であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の研究計画の予定通り,1年目の計画はすべて実行し,高解像度植生図をもとにした植生分布予測モデルが得られた。植生図が整備されていない地域についても,植生図の解析を進めた。植生分布予測モデルの結果として,植生学会・日本生態学会にて発表した。現在,植生分布予測モデルの結果について執筆作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,植物分布データベースをもとに植物群落分布予測モデルを構築する。以上の結果と植生分布予測モデルの結果を比較する。また,本年度中に前年度の結果を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルバイト雇用の開始時期が遅れたため,次年度使用額が生じた。本年度は,4月より継続して雇用を実施しているので,予定通り使用する計画である。
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