研究実績の概要 |
本研究の目的は,高解像度の植生図と最新の分布予測モデルをもとに,日本の森林植生帯の分布構造の検証を行うことである。本年度は,高解像度植生図をもとに作成した植生分布予測モデルの予測精度評価および予測精度向上のためのモデルの調整を行った。モデルの調整の結果,予測精度(86.5%)は前年に作成したモデル(正答率62.55%)よりも向上した。 また,植物分布データベース(環境省植生調査データ)より抽出した天然林優占種(マツ科モミ属・トウヒ属・ツガ属,ブナ科ブナ属・コナラ属・シイ属など)の分布データと環境データをもとに,植物群落分布予測モデルを構築した。抽出した各種の分布データとデジタル標高モデル,メッシュ気候値(暖かさの指数,最寒月の月最低気温の平均値,夏期降水量,冬期降水量)を重ね合わせ,一般化加法モデルにより,種分布予測モデルを構築した。自然林で優占する37種(高山帯:ハイマツ,亜高山帯:オオシラビソ,シラビソ,トドマツ,コメツガなど,冷温帯:ブナ,ミズナラ,クロベ,シナノキなど,暖温帯:ヤブツバキ,アカガシ,アラカシなど)を対象に分布予測モデルを構築した結果,ほぼすべての種について,予測精度の高い(AUC0.8以上)分布予測結果が得られた。各種の分布予測図を重ね合わせて植物群落分布予測モデルを構築し,各種が優占する植生帯(常緑広葉樹林,暖温帯針葉樹林,冷温帯針葉樹林,落葉広葉樹林,亜高山帯広葉樹林,亜高山帯針葉樹林)の分布領域を推定した結果,過去の研究で指摘されている各植生帯分布が概ね再現された。また,植生図を元に作成した植生分布予測モデルの結果と各種の分布予測図を重ね合わせて植物群落分布予測モデルの結果の比較を行った。
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