研究課題/領域番号 |
18K11729
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
佐川 志朗 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (30442859)
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研究分担者 |
田和 康太 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20771348)
大迫 義人 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (40326294)
菊池 義浩 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 講師 (50571808)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コウノトリ / 野生復帰 / 河川 / 水田 / ビオトープ / 魚道 / 防獣ネット / 電柱 |
研究実績の概要 |
円山川流域の河川、水田およびビオトープを対象に、コウノトリの主要な餌動物の分布・生息状況および生息要因について調査した。河川では、在来種であるイシガメの生息域が限定されることや、汽水性ハゼ類の主要ハビタットとして水際の緩傾斜砂底が重要であることが示唆された。水田では、魚類遡上数には水田魚道上端部の堰板の形状および越流水深が寄与していることが明らかになった。水田ビオトープでは、敷設された魚道への秋季通水により、コウノトリの餌動物であるタモロコなどの魚類が遡上することを見出し、魚道への秋季通水は、コウノトリにとっても有用であることが示唆された。また、ビオトープにおける除草や浅瀬や深場の創出等の人為的な管理は、ゲンゴロウ類等の水生動物のハビタットを創出、維持し、コウノトリが採餌場所として機能することが示された。 過去14年間(2006年~2019年)のコウノトリ繁殖つがいの造巣場所163例について、人工物との関係を整理した結果、電気事故と負傷事故が起こりえる危険な場所である人工物「電柱・鉄塔」を営巣場所として選択する傾向がみられた。また、過去14年間(2005年~2018年)のコウノトリの救護・死亡事例105例について死亡要因を分析した結果、「防獣ネット等の鳥獣対策資材」「送電線等の電気関係設備」に関する事故が2大要因であることが明らかになった。さらに、当年度中の救護個体7個体の健康状態の確認、死亡個体9個体の死因の特定を行ったが、致死に至る胃内人工物は確認されなかった。一方で、食道および胃内容物からは、ドジョウ、トノサマガエル、コオイムシ、トンボ目幼虫、コガムシなどの水生動物が検鏡されたことから、これらの止水性水生動物群集の生息場所となる湿性環境の創出が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然再生事業地のコウノトリからみた評価が十分ではない。また、市街地・集落や圃場・河川など土地利用の変遷過程について、時間的・空間的に整理する作業に時間を要している。しかし、この2つは19年度も作業期間に含まれているため、留意して進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
豊岡盆地に複数個所造成されているビオトープの水生動物群集の生息状況を調査し、湿地性水生動物群集の多様性が高い湿地環境を明らかにする。コウノトリ飛来状況の調査については、河川の自然再生地を含めて引き続き実施する。 人工物との関係性については、救護・死亡要因(e.g.送電線鉄塔)の位置をマッピングし、因果関係を解析する。 土地利用の変遷については、マッピング作業を進め、豊岡盆地における地域生活空間が移り変わってきた特徴について精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
豊岡盆地における土地利用の変遷整理および分析に遅延が生じている。また、コウノトリの利用環境についての現地調査および解析に遅延が生じている。次年度において、前者では、市街地・集落や圃場・河川など土地利用の変遷過程について、写真購入、聞き取り等を行い、時間的・空間的な整理を行う。後者では、自然再生事業地における、コウノトリの利用状況を発信機データ等に基づき把握していく。
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