研究課題/領域番号 |
18K11729
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
佐川 志朗 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (30442859)
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研究分担者 |
田和 康太 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20771348)
大迫 義人 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (40326294)
菊池 義浩 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 講師 (50571808)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コウノトリ / 水田ビオトープ / 自然再生地 / 水生動物群集 / 営巣場所選択 / 行動特性 / 死亡要因 / 人工物 |
研究実績の概要 |
豊岡盆地に散在する約30か所の水田ビオトープにおいて、コウノトリの主要な餌となるカエル類、水生昆虫、魚類などの水生動物の生息状況を四季にわたり調査した。その結果、各季において多くの水生動物が確認され、群集構造は山間部と平野部で異なることが明らかとなった。また、ツチガエル幼生や中・大型コウチュウ目などの重要な越冬場所となっていることが示された。すなわち、水田に水のない時期においても、コウノトリの採餌場所として機能していることが示唆された。 円山川本流の自然再生事業地において大型鳥類の利用状況を調査した結果、施工タイプが複数近接する再生地ほどコウノトリを含めた多くの鳥類種の利用が確認された。 コウノトリの営巣場所、のべ165例について集計した結果、各ペアの最初の営巣場所56例のうち安全な環境が32例(57.1%)、危険な環境が24例(42.9%)あり、後者のうち電柱が13例(54.2%)、鉄塔が6例(25.0%)、電波塔が3例(12.5%)であった.また、巣の撤去後、電柱で平均5.1回、送電線鉄塔で平均1.9回造巣を繰り返した。すなわち、コウノトリは営巣場所として電柱への執着が強かった。また、休息・塒場所としても鉄塔、電柱を使い、電線と橋を横切る時は必ず上に飛び上がる、道路を歩いて横切る、針金、傘の骨を巣材として使うなど、人工物との事故につながるコウノトリの行動特性が確認された。 コウノトリの救護・死亡計105例のうち44.8%(47例)が人工物に起因したものであることが判明した。原因の上位は、防獣ネット等の鳥獣対策資材によるもの20.0%(21例)、感電死や送電線衝突等の送配電設備によるもの18.1%(19例)だった。胃内容物から致死につながる人工物が1例で検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コウノトリの救護・死亡箇所(負の効果)と自然再生地(正の効果)の因果関係解析について、十分に進んでいない。この点について、20年度も作業期間に含まれているため、留意して進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
コウノトリの主要な餌となる水生動物群集の生息状況が主に河川域や水田域の自然再生湿地によって向上することが示唆されたことを念頭に、コウノトリの救護・死亡箇所との関係を解析する。また、地形・地質や植生など、研究テーマに関する各種データを収集すると共に、圃場整備など人為的な環境変化状況のGISデータ化を試みる。そして、コウノトリ繁殖個体の行動圏や事故発生場所などのデータをGIS上で重ねて、空間的な関係性から事故発生要因について分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
地理空間情報のポリゴン(ベクターデータ)作成に時間を要しているが、2020年度の前半に集中的に進める予定である。
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