研究課題/領域番号 |
18K11729
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
佐川 志朗 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (30442859)
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研究分担者 |
田和 康太 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20771348)
大迫 義人 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (40326294)
菊池 義浩 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 講師 (50571808)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コウノトリの野生復帰 / 自然再生事業 / 生物多様性 / 水田水域 / 営巣環境 / 土地利用変遷 / 救護 / バードストライク |
研究実績の概要 |
2005~2020年12月末までの救護および死亡原因を分析した。計147例のうち43.5%(64例)が人工物に起因したものであり、防獣ネット等の鳥獣対策資材によるもの19.7%(29例)、感電死や送電線衝突等の電気通信設備によるもの17.7%(26例)が上位を占めた。胃内容物から致死につながる人工物(発砲ゴム)が1例検出された。 本種の良好な採餌環境となっている農地での救護・死亡事例(53件)に着目したところ、各年の事例数と営巣数との間には有意な正の相関があり、水田での事例が最も多く、特に6~7月に水田へ採餌にきた個体が負傷・死亡している現状が明らかになった。また、水田での死亡個体からは、ガムシ等の止水性水生昆虫が多数検出された。農地での事例は今後も増加する可能性が推察され、自然再生により水生昆虫等の水生動物の生息地を保全する一方で、採餌の安全性への配慮が必要であることが示唆された。 豊岡盆地における明治期以降の土地利用について、地形図や空中写真を利用した変遷過程の把握に努め、また、現代における圃場整備や河川改修整備などに関する資料を収集し、これまでの実施状況について空間解析を行った。土地利用とコウノトリの行動圏との関係については、営巣場所周辺の環境を定量化し、これまで野外繁殖によって雛が巣立った巣塔とそうでない巣塔との比較を行った。その結果、前者では「田」、「建物用地」、「河川および湖沼」の割合が多く、人間の生活領域が含有されることが明らかとなった。 以上の結果より、コウノトリとの共生は採餌環境を創出・保全するだけでは達成が困難であり、人工構造物の安全配置を含めた地域づくりが必要である結論を得た。そして特に、過去の事故発生距離を根拠に、巣から半径350m以内における防獣ネットや送電線の視認性向上に配慮が必要であることを提示した。
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