研究課題
生態系サービスへの支払制度は、理論的には保全行動に対するアクションベースの支払制度よりも効果に対して支払額を決めるアウトカムベースの支払制度の方が政策の費用対効果が大きく、また空間的異質性の高い環境下では支払対象を空間的に絞るターゲティング戦略が有効である。一方で現行の支払制度はアクションベースの支払制度であり、ミスターゲティングが生じている可能性が指摘されている。本研究は農業生態系の空間的異質性に着目し、アウトカムベースの要素を取り入れる要件を明らかにしたうえで、ターゲット戦略の有効性を実証する。そのために(1)エージェントベースの土地利用モデルを用いて支払制度に複数のターゲット戦略を導入した場合の土地利用影響を明らかにし、(2)制度の効果を定量化する生態系サービス指標の選定と必要な空間範囲の設定など必要条件を明らかにする。今年度はおもにデータ収集と以下の分析を行った。(1)空間情報の整備とメタ解析:土地利用モデルに入力する基礎的な地理情報および集落毎の農林業センサスデータを収集し、分析に使用する空間情報データベースを整備した。都道府県レベルで支払制度の申請団体と対象農地のベクターデータを用いてメタ分析を行い、世帯調査を実施する集落を選定した。(2)選定集落における農家世帯調査:選定集落における対面調査を行った。調査項目に含む基本的な世帯属性から回答者を属性毎に分類し、線形モデルによって放棄農地の発生に影響する要因を抽出した。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究計画に沿ってセンサスデータの収集および農家世帯調査を実施し収集したデータを用いて予備的な分析を行った。
初年度に収集したデータと予備的な分析の結果に基づいてエージェントベースの土地利用モデルの構築を行う。また必要に応じて補足データの収集を行う。
次年度の4月に国際学会において成果発表を行ったため次年度使用額が生じた。次年度使用額は学会参加費および旅費として4月に使用した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)