研究課題/領域番号 |
18K11742
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
角野 晴彦 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50390456)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム) / MEA(モノエタノールアミン) / 硫酸塩 / 中温UASBリアクター / 排水濃度の変化 |
研究実績の概要 |
本研究では、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、MEA(モノエタノールアミン)を主な有機物として含み、これに硫酸塩を含有する電子産業排水を処理の対象とした。TMAH、MEAのBOD/ThOD比は、0.00、0.46であった。TMAH、MEAに馴致していない嫌気性汚泥を用いたメタン生成活性は、TMHA基質で認められず、MEA基質で認められた。TMAHは、これらの結果から難分解と言えた。 連続処理は、中温UASBリアクターを用いた。この反応槽は、294日間の運転を経過していた。排水の設定CODは、1,500 mg/L(期間I)から、途中、3,000 mg/L(期間II)に変更した。排水のCOD分画は、TMAH6割、MEA2割、その他2割であった。期間I、IIにおける硫酸塩の平均は、219、388 mgS/Lであった。硫化水素による阻害を回避するために、処理水のpHが7.5以上になるように管理した。期間IからIIへ排水濃度を変化させた際、硫酸塩の還元率が30%程度低下したが、TMAHとMEAの除去に悪影響はなかった。両期間において、メタン発酵処理の実用水準である有機物負荷(12 kgCOD/m3/day)で、全COD除去率は平均85%以上を達成し、流入したTMAH、MEAは完全に除去された。処理が安定すれば、流入した硫酸塩は平均95%以上還元された。実験期間中、保持汚泥のTMAH基質のメタン生成活性は、MEA基質のそれよりも常に高かった。TMAHは、保持汚泥が馴致すれば難分解ではなく、むしろ生物処理に適した有機物と言えた。硫酸塩還元は、TMAHの分解にほぼ関与せず、MEAなどの分解、なかでも水素消費に関与していたと考えられた。運転748日目において、汚泥床のMLSSは39.6 g/L、SVIは24 mL/gであり、グラニュール汚泥としての物性を有していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度の排水は、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、MEA(モノエタノールアミン)および硫酸塩を主体とした組成で、現場を想定して排水濃度を変化させた。有機物容積負荷は、12 kg/m3/day程度であり、実用水準であった。排水濃度の変化に対して、考案した運転方法によって処理成功に導くとともに、硫化物阻害、生物比活性および汚泥の物性を調査して処理機構を裏付けた。平成30年度は処理のボトルネックとなるTMAHを独自の方法によって速やかなスタートアップに成功し、令和1年度は本研究室の既存の知見を活かし考案した運転方法によって排水濃度の変化に対応できた。これまで得られた成果は実務的にも学術的にも有用であり、研究の順調な進展を示している。
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今後の研究の推進方策 |
電子産業排水に含まれるTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やIPA(イソプロパノール)は、メタン発酵に至るまで特徴的な経路を持っている。この特徴は、構成される微生物相の特徴にも現れる。次に明らかにすべき点は、有機物組成が変更した際、この特徴に直ぐ様対応するため、すなわち特徴的な微生物を保持するための運転方法を提案と、実験的な検証である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他機関からの助成金が採択され、共通的な消耗品等の購入に充てた。そのため、直接経費が残った。 次年度は、既存の装置や機器に対して消耗品交換や更新を行い、随時経費を支出し、研究環境を整える。
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