研究課題/領域番号 |
18K11742
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
角野 晴彦 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50390456)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IPA(2-プロパノール) / 硫酸塩 / 中温UASBリアクター / 排水濃度の変化 |
研究実績の概要 |
本研究では、IPA(2-プロパノール)と硫酸塩を含む電子産業排水を処理の対象とした。UASBリアクターを用いて、連続処理を実施した。 排水のIPAは、Phase 1で2500 mg-COD/L、Phase 2で5000 mg-COD/Lとした。電子産業排水に特徴的な物質である硫酸塩、カルシウムは、300 mg-S/L、150 mg-Ca/Lとした。酵母エキスは、汚泥の生育の補助基質として250 mg-COD/L加えた。重曹は1.0~0.2 g/Lの割合で添加し、処理水のpHを7.5以上とした。リアクターの温度は、全Phaseで35-37℃とした。 Phase 1は、COD容積負荷5 kg/m3/dayで開始した。8~30日目における処理水CODは、全COD 1,816~1,296 mg/Lとなり、減少傾向であった。アセトンは8~22日目において138~532 mg/Lまで増加し、24日目において582 mg/Lであった。30日目では、初めて酢酸190 mg/Lが検出された。IPAは、アセトン、酢酸を経てメタンになる。本実験結果は、前述の代謝経路と合致していた。36~73日目におけるCOD除去率は、全CODで78~93%と不安定であった。 Phase 2は、COD容積負荷10 kg/m3/dayで開始した。83日目は、全COD 364 mg/L、溶解性COD 328 mg/L、IPA 70 mg/L、アセトン75 mg/L、酢酸99 mg/Lであった。COD除去率は92%となり、負荷を上げてから3日間で、高い処理性能を得られた。そこから日を追うごとに減少し、97日目は、全COD 333 mg/L、溶解性COD 288 mg/L、IPA 7 mg/L、アセトン6 mg/L、酢酸9 mg/Lであった。83~97日目の処理水質は、Phase 1と比較して向上かつ安定していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のUASBリアクターは、IPA 5000 mg-COD/Lの排水をCOD容積負荷10 kg/m3/dayで処理し、全COD除去率約90%を達成できた。そのため、IPAと硫酸塩を含む排水の嫌気性処理の実現に見込みが立った。しかし、不安定な処理の期間も確認できたため、さらに長期間の運転が必要である。硫酸塩還元は、メタン発酵に適したpH、ORPを形成する一方で、硫化物による有機物除去への阻害も確認された。よって、硫化物による阻害を発生させないよう、pH等の管理が必要である。 平成30年度は処理のボトルネックとなるTMAHを独自の方法によって速やかなスタートアップに成功し、令和1年度は平成30年度の知見を活かし考案した運転方法によって排水濃度の変化に対応できた。令和2年度は、独自の市場調査で得た新たな排水種を探し、適用排水種の拡大に繋げた。これまで得られた成果は実務的にも学術的にも有用であり、研究の順調な進展を示している。
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今後の研究の推進方策 |
電子産業排水に含まれるTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、MEA(モノエタノールアミン)IPA(2-プロパノール)は、メタン発酵に至るまで特徴的な経路を持つとともに、硫酸塩が寄与している経路を持っていた。硫酸塩還元は、メタン発酵を阻害する一方で、処理のスタートアップや促進に寄与していると考えられた。この特徴は、安定的なメタン発酵処理を維持するうえで硫酸塩還元を制御すべきであることを示している。今後は、メタン発酵と硫酸塩還元の比活性を調査し、これら2つ反応の切り替えや競合関係を調査し、実践的な運転方法を提案と実験的な検証をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の流行に伴い、学校施設の使用と研究補助員の出勤が、制限された。この制限の内容は、日替わりで、かつ近隣教育機関の状況とは関係なく変更された。本研究室は、この制限の内容変更を予期することも追従することもできず、実験計画を調整できなかった。そのため、直接経費が残った。 次年度は、残った課題に対して、装置や機器の消耗品交換、試薬購入によって、随時経費を支出し、研究成果を出す。
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