本研究では,家庭用浄化槽の低炭素化を実現するために,液体中の微細気泡へプラズマを形成し,生成した化学種を利用して有機物の分解を行う,新たな促進酸化法の確立を目指している.本年度の成果は以下の3点である.(1)供給気体の違いによる生成物濃度比較(2)電極の並列化(3)酢酸の分解調査 (1)供給気体として異なる3種類の気体(空気・酸素・アルゴン)を用いて,生成物質と溶存物質濃度の調査を行った.まず,放電発光スペクトル解析より,いずれの気体においても窒素・酸素・水素に起因するスペクトルが確認されたが,難分解性有機物分解のキーとなるOHラジカルについては,窒素起因のスペクトルとの判別が困難であり,確認できなかった.次に,パックテストより,アルゴンを用いた場合が過酸化水素・オゾンともに溶存濃度は一番濃く,次いで,酸素と空気は同程度の溶存濃度遷移であった.前年度までの研究結果も加味すると,オゾンについては,未溶解のオゾンが多量に存在していると考えられる.また,過酸化水素については,OHラジカルの傍証とされていることから,本装置においてOHラジカル生成が示唆された. (2)プラズマを形成させる電極部を1対から5対・10対と並列に増加させたところ,脱色時間は短縮され,オゾン・過酸化水素の発生濃度は増加することが明らかになったが,電極部個数との間には規則性は無いことが明らかになった. (3)難分解性有機物モデル物質として酢酸を採用し,供給気体にアルゴンガスを用いて,分解試験を行い,高速液体クロマトグラフィにて濃度測定したところ,初期濃度477[ppm]から約80[ppm]の減少が確認された.しかし,実用化には,さらなる高効率化が必要である.
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