研究課題/領域番号 |
18K11748
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 俊徳 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30612452)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国立公園制度 / 登山道管理 / ガバナンス / 台湾 / 取引費用 / 省庁間調整 / 玉山 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウィルスの影響で、出張や調査が大幅に制約され、学会発表の機会も大きく減ったことから、支出をともなう活動は書籍やノート型PCの購入を除いて、ほぼ無かった。一方、2019年度に調査を行った台湾の国立公園制度及び登山道の管理手法に関する調査結果の整理を行い、2本の査読付き論文を執筆することができた(いずれも共著/筆頭論文は1本)。 台湾の国立公園制度は、土地所有については日本型を採用し、管理組織としてはアメリカ型を採用している点で、比較参照の価値が高い。同論文では、日本の国立公園における登山道の適正利用に関する課題を踏まえ、台湾の玉山国立公園にある「玉山登山道」を対象とした利用ルールの実態解明と実施構造に関する分析を行った。文献調査や統計解析に加え、台湾の国立公園を所管する内政部営建署国立公園組に対する聞取り調査、玉山国立公園管理処に対する複数回に及ぶ質問票調査、玉山登山の許可申請から実際の登山を通じた参与観察を行った結果、台湾の国立公園の特徴として「低い取引費用と豊富な行政資源」が判明し、先行研究で指摘されている「高い取引費用と脆弱な行政資源」を特徴とする日本の国立公園との顕著な差が明らかとなった。また、日本と同じく、台湾の国立公園においても、多様な利害関係者という特徴を有しつつも、省庁間調整が円滑に行われていることや、公園当局が警察庁(国立公園警察隊)やパークボランティアと協力してモニタリングを効果的に行っていることを明らかにした。 今年度に実施した新たなデータ収集活動として、日本と類似した土地所有制度を有している韓国の国立公園行政に関するアンケート調査をソウル大学のソン准教授と共同で実施した点が挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で国内外の出張や調査、学会活動の制約があり、活動が滞った。一方、2018-2019年度に実施した調査や学会発表から、2020年度は、二本の原著論文、一本の招待論文、計3本の論文を刊行することができた。研究計画の遅れは否めないが、成果としては、最低限のタスクをこなした状況だと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は研究費を使えなかったため、計画を2021年度まで延長して実施することとする。昨年度の経験から、コロナ禍では、海外調査が不可能に近いことを学習した。計画を全面的に練り直し、国内の調査をより充実させ、遠隔での聞取り調査や会合も強化しながら、データの取得を試みる。また、学会発表などがオンラインとなることが見込まれるため、研究発表にあてていた旅費を調査協力者に対する謝金に切り替えるなど、柔軟な対応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウィルスの影響で、出張や調査が大幅に制約され、学会発表の機会も大きく減ったことから、かかる旅費等の支出がなかった。2021年度は、計画を大幅に見直し、海外調査を早期に断念し、代わりにリモートでの調査が円滑に進められるような機材の購入(デスクトップモニターなど)、国内調査の充実、研究協力者への謝金などに振り分けるようにする。
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