研究課題/領域番号 |
18K11748
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 俊徳 九州大学, アジア・オセアニア研究教育機構, 准教授 (30612452)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エコツーリズム / 保全利用協定 / 国立公園 / ガバナンス / 取引費用 / 自主ルール / 行政資源 / ホエールウォッチング |
研究実績の概要 |
2021年度は、引き続き、新型コロナウィルスの影響により、調査が著しく制限された一年であった。2020年度の経験から、予定していた海外調査を断念し、国内調査の拡充に振り分けたが、研究対象として想定していた沖縄県や離島(奄美大島、屋久島)が恒常的に緊急事態宣言をはじめとする渡航自粛の制限を設けていたため、再び足踏みをせざるを得ない状況となった。こうした中、沖縄県に対する情報開示請求により、保全利用協定の申請書や定期報告書、話し合いの記録を入手する等の努力を行った。現在、解析に基づいて、論文投稿の準備を進めている。 また、コロナ禍の制約を受けて、研究の射程を広げることを企図したのが2021年の特徴であった。異分野の研究者とのコラボレーションを積極的に推進し、共著論文がSustainability Science誌に採択された。同論文は、エコツーリズムが自然環境にどのような影響を与えるかを数理解析によりモデル化したものであり、私はDiscussion部において、モデルを様々な事例から実証的に説明する役割を担った。本科研費の調査により得られたデータを用いることができ、また、Discussionにおける実証性が査読者から高い評価を得てアクセプトに繋がった点は、大きな成果だと言える。 また、①慶良間諸島国立公園におけるホエールウォッチングの観光利用を事例とした研究、②漁業資源の管理に関するモデル研究、③ネパールにおけるアグリツーリズムの事例研究の3本も共著論文として投稿済みであり、いずれも、本プロジェクトで得た知見を援用している。新型コロナウィルスの影響により、本プロジェクトの本丸である取引費用の同定に要する調査部分が遅れているが、その分、視野を広げて異分野との協働を推進する時間を割くことができたのは一定の成果だと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度も新型コロナウィルスの影響により、計画に遅れが出ている。当初は、行政官や利害関係者に対する複数回に及ぶ綿密な聞取り調査を通じて、内部資料の取得や調整プロセスの解明等を通じて取引費用の同定を行うことを企図していたが、コロナ禍においては、相手方と高度な信頼関係を要する綿密な聞取り調査が、遠隔では容易ではなく、また、担当者の部署の異動等もあったためである。 一方、研究の射程を広げて、異分野の研究者とのコラボレーションを積極的に推進したことにより、共著による査読論文がSustainability Scienceに採択された。また、①慶良間諸島国立公園におけるホエールウォッチングを事例とした研究、②漁業資源の管理に関するモデル研究、③ネパールにおけるアグリツーリズムの事例研究の3本も共著で投稿済みであり、いずれも、本プロジェクトで得た知見を援用している。また、屋久島学ソサエティの全体シンポジウムにおけるコメンテータとしての登壇や、エコツーリズムの専門家として朝日新聞からインタビューを受けるなど、アウトリーチ活動も行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウィルスに関係する渡航自粛等の制約から予算を使うことができなかったため、再延長申請を行い、2022年度までプロジェクト期間を延ばした。2021年に試行した異分野の研究者とのコラボレーションは、自身の有する知見と相手の有する知見を合わせることが、論文としても価値を持つケースがあることを学ぶ良い機会となった。2022年度も海外渡航は楽観できず、沖縄や島嶼への渡航は最大限の感染対策が求められる状況に変わりはなく、これから信頼関係を構築して、新たなデータを取りに行くというよりは、すでにあるデータをいかに解析し、論文投稿に繋げるかを考えることが得策と考えている。例えば、国立公園の利用ルールの実態や、これらルールがどのように決まるかについて、本プロジェクトを通じて、すでに一定のデータ蓄積があるため、国際比較や制度間比較の観点からモデル化することで、当初想定していた制度毎の事例研究よりもインパクトの高い論文を書くことが可能ではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、計画通りの調査が実施できなかったため。2022年度においては、追加調査に要する渡航経費やアウトプット(論文執筆にかかるMTGや投稿料等)に経費を割くことを想定している。
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