最終年度は、本プロジェクトがテーマとしてきた取引費用と行政資源の関係を、「ガバナンス・パラドックス」としてまとめた論文をSustainability Science誌 (Springer)から発刊することができた。 2018年度に開始した本プロジェクトだが、コロナ禍等で約3年の遅延を余儀なくされ、当初の予定より遅れて終了することとなった。プロジェクトの直接的な成果(本科研費を謝辞に明記しているもの)として、英語の査読付き論文が5本、日本語の査読付き論文が3本刊行された。特に、台湾・玉山国家公園の玉山登山道における利用ルールを分析した論文(田中・蕭2021)、沖縄県の保全利用協定に関する論文(Tanaka et al. 2022)、取引費用と行政資源の関係を「ガバナンス・パラドックス」として分析した論文(Tanaka and Takashina 2023)は、本プロジェクトを代表する成果である。また、2021年に、本プロジェクトが対象としていた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が、世界自然遺産に登録され、観光利用に対する懸念が強まり、代表者が、環境省の科学委員や沖縄県の西表島観光管理タスクフォース委員に就任するなど、政策形成に寄与する立場となった。その他、学会や国際会議、市民向け講演会等を含め、研究成果を発信する機会を多数もつことができたことは成果である。 また、本プロジェクトを発展させた内容が、新たに科研費(基盤B)に採択された(「自然観光地を対象としたオーバーツーリズムを抑制する政策手法の比較分析」/2024-2026年度)。2024年6月には、本プロジェクトを謝辞に明記した本の出版も予定されており、想定以上の成果を残すことができた。これらは基金化やコロナ禍の特別対応といった諸制度の賜物であり、資金が使いやすくなったことに負うところが多い。心から感謝したい。
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