研究課題/領域番号 |
18K11750
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
富井 尚志 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (40313473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | センサデータベース / サイバーフィジカルシステム / スマートグリッド / 電気自動車 |
研究実績の概要 |
令和元年度には、平成30年度の実績をもとに継続的な研究に従事した。その概要は下記の【1】~【4】に分類される。 【1】環境中に埋め込まれた種々のセンサから日常データを収集・統合して高速に検索できる。本項目については、継続的にデータ収集とデータベース登録を行った。実際のEVを用いた走行ログは本研究独自に収集したものである。このため、今後も継続してデータ収集を行う。また、エネルギー消費および再生エネルギー発電の予想のために、新規に気象報データの収集にも着手した。EVのエネルギー消費に関するデータベース設計については発表論文に詳細を記載した。 【2】多様な面から効果的な集計と情報可視化ができる。本項目については、PCP (Parallel Coordinate Prot)を基とした可視化システムに関する論文が情報処理学会論文誌データベースに採録された。また、EVの走行可能範囲に関する研究について、VLDB併設ワークショップにて発表を行った。さらに、EVの消費エネルギー解析に関する情報可視化の研究について研究発表を行った。 【3】情報可視化結果について定量的な精度検証ができる。本項目について、EVの消費エネルギー推定の精度検証に関する論文が情報処理学会論文誌データベースに採録された。その中で、適切なデータクレンジングを行うことによって推定精度が向上することが確認された。 【4】収集したデータと可視化結果に基づいてエネルギー環境の最適化を図ることができる。EVと再生可能エネルギーを有効に活用するスマートグリッドに関する研究について、複数の研究発表を行った。令和元年度は特に、「ロードレベリング」と呼ばれるエネルギー需要量を一定に保つ方法を、EVのバッテリーを活用して達成するスマートグリッドのシミュレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示した4つの目標それぞれについての進捗を説明する。下記に示すように、おおむね順調に進捗している。 【1】環境中に埋め込まれた種々のセンサから日常データを収集・統合して高速に検索できる。本項目については、独自に構築したデータベースサーバ、および、ライフログ収集システムがおおむね順調に稼働している。実環境から得られる実データを用いることに本研究の特色がある。したがって、データ収集は今後も継続して行う。データベースのスキーマ設計については、プロトタイプシステムが完成している。このプロトタイプに基づく研究成果が得られている。 【2】多様な面から効果的な集計と情報可視化ができる。本項目については、PCP (Parallel Coordinate Prot)を基とした可視化システムに関する論文が採録された。今後は、PCPだけではなく、多様なグラフ化などの可視化支援を行うことを計画している。また、EVの消費エネルギー可視化に特化した新しい可視化システムの開発にも着手した。 【3】情報可視化結果について定量的な精度検証ができる。本項目については、EVの消費エネルギー推定の精度検証に関する論文が採録された。それ以外に、スマートグリッドのエネルギーバランスに関するシミュレーションシステムを構築している。今後は、スマートグリッドの定量化と精度検証について注力する。 【4】収集したデータと可視化結果に基づいてエネルギー環境の最適化を図ることができる。令和元年度は「ロードレベリング」と呼ばれるエネルギー需要量を一定に保つ方法を導入した。この方法がスマートグリッドにどのように寄与するかについて、定量的に評価していく。最終的には、センサデータとシミュレーションが統合されたサイバーフィジカルシステムとしての完成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗を最終的な成果とするために、基本的には上記の各分野をそれぞれ発展させる。まず、実車のEVを用いたデータ収集は継続する。また、スマートグリッドのシミュレーション実験のための電力需要データ、および、気象オープンデータの収集も行っていく。データ可視化については、情報可視化過程をSQLに類似した言語で保存する手法を提案したが、これを拡張する。同手法を用いて、スマートグリッドシミュレーションの可視化に挑戦する。EVをバッテリーとして用いた場合、リチウムイオンバッテリーの容量が損耗することが知られている。そこで最終年度には、新しい定量化指標として、バッテリー容量の損失量を追加する。 得られた成果に対して、論文誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行のため、出張計画していた第12回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2020)の現地開催が見送られた。(オンライン開催となった。)このため、当初計画していた旅費充当分キャンセルとなり、令和2年度への繰り越しとなった。 なお、令和元年度は順調な研究成果が得られたので、旅費・論文掲載費が当初計画を超過した。このため、物品費への充当が不足した。これにより、令和元年度に導入することを見送った機器がある。したがって、令和2年度は物品費への充当を増やす計画である。
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