研究実績の概要 |
ミャンマーでの調査に基づき、加賀爪は、米作部門の完全民営化(2003)により、国内米価と国際価格の連動性が強まり、米作地域での資源利用効率が向上したことを実証した。更に、中国の主要穀物生産省のデータを収集し、パネルデータによる固定効果モデルを分析した結果、農地規模拡大は単収を増加させないが、生産費を大きく引き下げ、穀物生産の利潤を増加させること、第2に、生産量と利潤に関しては、農地規模との関係で逆U字形を、生産費との関係ではU字形を示し、その転換点は1.333haであることを確認した。第3に、農地規模が単収と生産費に及ぼす逆比例の効果は次第に漸減し、費用効率性の優位性は徐々に低下していることを示した。 エチオピアのティグライ地域において、鬼木と加賀爪は、確率的生産関数を推定し、植林に対する共有地配分政策の効果を評価した。この政策への参加農民と非参加農民の間で農業生産の技術的効率性を比較し、共有地の配分が技術的効率性を改善すること、この政策は、土地を保全しながら農業所得を増大させることを示した。 また、自然資源保全に関わる社会規範の関数f、および自然資源管理活動の関数gを次の2式で特定化して、各々、ProbitとOLSで推定した。①norms<社会規範>=f (d<都市からの距離>, Z<世帯特性>, p<政策介入>)、②nrm<自然資源管理活動>=g(norms*<推定社会規範>, G<地理条件>, p<政策介入>) 。これより、住民の自然資源保護に関する社会規範は都市に近いほど高く、また、標高が高く、共有地面積が狭く、出稼ぎ人口が少ないほど高い傾向があり、こうした自然保護の社会規範が高いことが囲い込み等の保全活動につながる事を解明した。 日本と中国に関して、衣笠は、自然災害と少子高齢化が個人貯蓄率を長期的に低下させ、農村地域の資源利用効率に影響することを計量的に示した。
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