消費者の環境配慮行動についてアンケート調査を実施し分析する分析枠組みと分析手法の構築を試みた.本研究の貢献は,第一に,環境に対する考え方や環境配慮行動の多様性を多様なまま把握すべきとの認識に立ち,潜在クラス分析に代表される混合分析をベースに置いた分析手法をとるべきと主張し,その分析手順を検討した点である。これによって,線形回帰モデルを基本として消費者属性のみでその偏位を説明しようとする従来の分析とは異なり,多様な消費者の認識や行動のパターンを「ペルソナ」化が可能となる。それは,マーケティングで言うところの市場セグメンテーションに対応し,消費者向け環境施策の対象とアプローチ方法を明確にする。第二に,この分野で精力的な研究蓄積が行われている社会心理学の知見をふまえながらも,さらに経済学における選択モデルを明示的に組み込んだことである。これによって,従来の分析では曖昧にされていた推定パラメータの意味づけと,明示的な制約条件の組み込みが可能となった。第三に,アンケート調査における被験者の負担の軽減と,被験者の疲労または真摯さの欠如における回答におけるノイズの特定と分析上の処置の方法を検討した。近年は,アンケート代行業者に委託しWebサイト上での調査が実施されることが多くなり,回答には必ずしも真摯でない回答も含まれるようになった。従来の回答の整合性チェックに加え,探索的潜在クラス分析で特異な回答を抽出し,その整合性を評価することで,標本の選抜をする手順を検討し,分析の精度と信頼性の向上を図った。
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