研究課題/領域番号 |
18K11759
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
堀江 哲也 上智大学, 経済学部, 准教授 (40634332)
|
研究分担者 |
岡川 梓 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会環境システム研究センター, 主任研究員 (20550065)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 環境保全型農業 / 生態系保全 |
研究実績の概要 |
農林業センサスを用いた分析:現在、2015年度の農業センサスを用いたクロスセクションデータの分析を行っている。2005年度、2010年度のデータも入手済みではあるが、パネルデータとしての接続の作業途中であるため、行えていない。 アンケート調査を用いた分析:また、昨年度末(2019年3月)に行ったアンケート調査で得たデータの分析を行った。ここでは、まず、農家の保全型農業を採用するインセンティブについて、以下の3点が明らかになった。(1)稲作面積が広い農家ほど、保全型農業を採用する傾向にある。(2)農業従事年数が長い農家や近隣農家との関係を重視する農家は、保全型農業を採用する傾向にある。(3) 一方で、環境負荷軽減を重視していることと保全型農業の採用の間には相関はない。(4) 売上高を重視する農家は保全型農業を採用しない傾向にある。 また、稲作農家の販路の選択に関する傾向については、以下のことが分かった。JA以外の販売先を選択する農家は、(5)農産物により高い評価がつく販路を開拓する努力をする。また(6)JA以外の販売先を採用する農家は、保全型農業をより採用する傾向にある。(7)JA以外を販路に持つ農家は、保全型農業を採用する傾向にある。 以上から、以下のような政策的インプリケーションが得られた。まず、環境よりも集落への貢献という面から農家の環境保全型農業採用のインセンティブを引き出す方がよい可能性があることが分かった。また、また、保全型農業へのより高い付加価値を農家に保証するために、JA以の取引先の情報を農家に提供することが、農家に保全型農業を普及させる可能性があり、また、専業農家の割合を上昇させることは保全型農業普及促進につながる可能性があるということが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中にアンケート調査に基づいた研究も行う予定である。現在、アンケート調査票が完成し、2019年11月に「人を対象とする研究」に関する倫理委員会による審査を受け、審査を通った。ただし、アンケート配布に関して、自治体の協力を得なければいけないのだが、複数の自治体と話し合ってきたが、新型コロナウィルスの発生により、一時、話し合いを中断している。状況の収束を待ってから、改めてアンケートの実施についての検討をしようと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、農業センサスを用いた研究を続行する。
次に、現行の補助金のような金銭的インセンティブのような不十分な金銭的インセンティブを与えるぐらいであれば、一切金銭的インセンティブを与えずに、農家に販路拡大に関する情報を供与したり、集落の環境保全についての社会的規範を刺激するような動機付けを農家に行った方が環境保全型農業は促進されるのではないかという疑問がわいているため、この部分の研究を進めようと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実施する予定であったアンケート調査が2020年度以降へと延長されたため、資金が残っています。新型コロナの影響で、アンケートの配布に関する自治体からの協力を得ることができるかどうかはまだ確定していないですが、2020年にはアンケート調査を実施したいと考えております。そのため、この未使用になっている資金を2020年度に使用する予定でいます。
|