研究課題/領域番号 |
18K11759
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
堀江 哲也 上智大学, 経済学部, 教授 (40634332)
|
研究分担者 |
岡川 梓 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会環境システム研究センター, 主任研究員 (20550065)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 環境保全型農業 / 農地規模 / 採択確率 / 気候変動抑制対策 / 気候変動適応 |
研究実績の概要 |
2021年度は、環境保全型農業について2つの方面から研究を行った。1つは、農地からのメタン発生を抑制をするという、農家による気候変動抑制対策に関するアンケート調査とその分析である。もう1つは農業生産活動における環境汚染物質の抑制行動(化学肥料の使用減、農薬の使用減、堆肥の利用)に関する農業センサスデータに基づいた研究である。前者は2021年度に新しく行った研究であり、後者は前年度から継続している研究である。さらに新たに、気候変動の農作物生産への影響について研究を1つの研究を行った。これは、農林水産省の刊行データを用いた研究である。
農業センサスデータに基づいた研究では、以下のことが分かった。すなわち、農業生産活動における環境汚染物質の抑制行動(化学肥料の使用減、農薬の使用減、堆肥の利用)に関する農業センサスデータに基づいた研究では、農家が農地の規模が拡大するほど、汚染物質抑制行動を採る確率が上昇するが、ある一定の規模を超えると確率が下がり始めることが分かった。
これまでの研究では、農地の規模が拡大するほど、作物収量の不確実性が高くなる、環境汚染物質抑制行動を採用した農法を、全農地の一部において採用する可能性が高くなることが明らかになっていた。我々の研究結果はこれに新たな発見を加える。農地がある一定の規模に達するまでは、農地の規模経済性によって生じる利潤の増加と、環境汚染物質の抑制(つまり環境保全型農業)による増加がもたらす農産物の付加価値の上昇とそれによる利潤の増加を期待し、抑制行動を採る。しかし、その規模を超えると、環境保全型農業が生み出す付加価値による利潤の増加を期待するのでなく、規模の経済性が生み出す利潤増加により期待をするため、環境保全型農法の採択をしなくなっていくのではないかと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に農家による気候変動抑制対策に関するアンケート調査を滋賀県において行った。そのため、同フィールドにおける、調査を受ける農家の混乱を避けるために、農業生産活動における環境汚染物質の抑制行動(化学肥料の使用減、農薬の使用減、堆肥の利用)に関するアンケート調査を別に分ける必要があった。そのためには、東京から県庁舎に訪問し、アンケートの郵送作業(個人情報を含むため)を行わなければならないが、COVID19の感染急拡大により、複数回のアンケート調査を行うための訪問を複数回行うことができなかった。2022年度におこなうことができると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、農業生産活動における環境汚染物質の抑制行動(化学肥料の使用減、農薬の使用減、堆肥の利用)に関するアンケート調査とそのデータ分析を行う予定である。2021年度に、茨城県において、有機農業を行っている農家への聞き取り調査を行った。その際に、新規に農業を始める農家は、既存の農家よりも、有機農法を採択する傾向が強いように感じられた。有機農業を含む環境保全型農業について、国の政策の場においても、学術的研究の場においても、既存の農家への環境保全型農法の採択を促進することが議論されてきた。しかし、実際には日本における環境保全型農業の普及率は、非常に低いというのが現状である。そこで、2022年度の研究では、「既存農家」と「新規就農者」の間における、環境保全型農業への取り組みの程度の差を検証することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にアンケートを1つ実施していないため、その実施費用が残っている。2022年度そのアンケートを実施し、その残額を利用する予定である。
|