研究課題/領域番号 |
18K11760
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
根本 志保子 日本大学, 経済学部, 教授 (70385988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 倫理経済 / 市場類型 / 環境倫理 |
研究実績の概要 |
産消提携運動の思想と実践の経済学的分析から視点を拡げて、1970年代に始まる有機農産物流通事業を事例として、環境保全的および労働配慮的な財を供給するための「倫理経済」の事業形態とそこでの倫理の考察として研究をまとめている。それらでは、共通して、以下の4つの事業目的が提起されていた。①農業者の所得保証、②生態系循環に基づく食料生産、③健康的で安全な食べ物、④食料生産の安全保障と将来世代への持続可能性、である。それらはいずれも、「食べ物」の生産・流通・消費を通じて、自然生態系の保全という環境持続可能性と、農業生産者の厚生の改善による食料生産の経済的持続性の両立であり、それにより、将来世代に向けて、食料生産の持続可能性を保証することを目的としている。 考察の切り口は二つある。一つは、それぞれの当初の理念とその後の経過において実現された倫理(消費者倫理・環境倫理)の考察である。その50年の経過から言えば、消費者団体としては1980年代半ばをピークとして徐々に縮小し、農場直結型(CSA)以外は、消費者団体としては役割を終えつつある。理由は主に、地域を中心とした対面コミュニケーションの衰退と、ボランタリー組織の維持コストが参加者にとって高いことにある。環境や労働者に配慮して生産された財の「買い支え」は、仲介を期待された「共」的領域の衰退により、市場を媒介とした「個」が、環境保全あるいは労働者の厚生に配慮するという「公」を、直接的に作り出す関係に移行している。 最終的な評価視点として、3つの市場類型に基づき、各事業で実現された環境倫理を4つの観点から評価している。(1)農と都市の融合、(2)消費者責任、(3)ディープ・エコロジー、(4)必要性、である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、追加のフィールドワークと文献調査を行ない、各事業者の事業経過の50年にわたる経緯を、活動当初の歴史的な経緯やその後の市場状況とともに把握した。特に本科研費を使って出張し、産消提携運動初期の思想家の所蔵文献の発掘と整理を行ない、本人所蔵の貴重な文献やメモなどを入手することができた。それにより既刊文献では把握できない当時の状況を俯瞰することが可能となった。 また2023年度は、理論および思想的背景からの考察を深め、成果のまとめの段階に入っている。調査結果は、環境倫理および経済史の観点から考察し、成果を書籍として出版すべく執筆を継続した。加えて調査結果とその評価を3回の国内にて研究発表を行ない、有機農産物流通を事例とした「倫理経済」の成立可能性と条件についての考察を深めた。同時に、市場での競合状況や事業としての経済性(市場性)と環境倫理の方向性の乖離への分析の必要性などを得ている。それらを最終報告への示唆として生かす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
成果の論文掲載と書籍執筆の完成を中心に、理論的な考察を進めている。また国際学会を含めた成果の発表と複数の論文の投稿を予定している。 書籍は調査部分の執筆を終了し、2024年度は、理論的な補強をしながら、結論をまとめる予定である。成果発表は、現在、本科研費での成果のうち、論文2本を投稿予定である。既に決定している国際学会での発表は、History of Economic Thought Society of Australia Conference(2024年9月25日~27日、Alphacrucis University College, Cowper St Parramatta, Sydney)でのOkada's‘Consumer Self-Sufficient Farm’and Yukio Tsuyuki's‘Adaptation to Nature’: A Practical Example of the Consumer Movement for Organic Produce in Japanである。これらでの評価とディスカッションを元に、成果への示唆として生かす予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度~2021年度にかけてのコロナ禍およびにより、2022年度のウクライナでの戦争の影響による航空便の減便などにより、オランダでの調査が実施的できていない。旅費での支出がなくなったため、次年度使用額が大幅に増加した。 2024年度は、国際学会での発表も予定している。そのための研究費も使用計画中である。
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