研究実績の概要 |
日本の原子力安全規制でも米国のように費用便益分析(コスト・ベネフィット分析)を審査会合内や通常の安全解析の作業の一環として導入するか、または事業者から提示させて公開の場で議論する必要があると考えている。 主な成果は下記である:1) 統計的生命価値(Value of Statistical Life,VSL)の適用:これは政策の可否等を判断する費用便益分析の一つで、死亡リスクを事前に軽減するために用いられる支払意思額を考える手法である。WTP(ΔRisk)をリスクの減少量に対する支払い意志額、ΔRiskをリスクの減少額とすると、VSL=WTP(ΔRisk) / ΔRisk と定義される。事故から1年後の東京都の場合(死亡リスクは0.81)を考える。福島事故時の東京の人々の移住や食料購入、被爆対策の状況を参考にして、一人当たりの支払い意志額を仮に10万円(US$1,000)とする。この場合、VSLは約12万円(US$1,200)となる。さらに900万人の場合では合計約1兆円(US$1,200x9 million=US$ 10 billion)となる。この値は、日本の近年の年間国家予算約100兆円の1/100である。このVSLについて誰が払うのか検討が必要にある。再処理工場のさらなる安全対策費として日本原燃と事業者が払うという可能性もある。 さらに再処理工場の事故時におけるリスク評価を行った。試算には、簡便かつ透明性が高く、放射性核種の拡散に伴う集団線量を求める方法として実績のあるWedge Modelを用い137Csを対象とした。例えば137Csによる土壌汚染と外部被ばく線量についての試算結果では、六ヶ所村(施設から<10km)で約3x106kBq/m2、東京(施設から<620km)で約3x104kBq/m2となった。
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