最終年度である2020年度は、前年までの研究成果に基づき、研究実績の取りまとめを行った。主たる具体的な中身としては、①J.Defournyらの所論を参考に、社会的企業とその事業の理論的性質に関する分析フレームワークを整理・提示し、それを用いて再エネ関連分野で活動する日本の諸組織の類型化を試みた。②日本において社会的企業が取りうる法人格の選択肢、「株式会社」「NPO法人」「協同組合」「社会的企業に特化した新たな法人格の創設」の4つをとりあげ、米英の制度的動向等もふまえつつ、そのそれぞれについて再エネ関連事業や地域内経済循環、持続可能社会の観点から利害得失をまとめた。③再エネ関連分野の社会的企業のコーポレート・ガバナンスについて、主としてステークホルダー型コーポレート・ガバナンスの観点からそのあり方を検討し、「ミッション・ドリフトをいかに防ぐか(公益のエンフォースメント)」「経営者による効果の乏しい裁量的行動をいかに抑制するか(公益の具体化)」といった課題について考察した。 そして研究成果の報告・共有を目的として、環境経済・政策学会2020年大会において企画セッション「環境ガバナンス論とサードセクター研究:到達点と課題」を企画・主催し、経済学・社会学・国際関係論・政治学・法学の各分野の専門家と意見交換を図ったほか、環境ガバナンスと社会的企業をテーマとした学術論文および研究書籍の執筆準備にも着手した。
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