研究課題/領域番号 |
18K11773
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 泰平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70585190)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フィリピン / ビザヤ地方 / 戦争犯罪 / 性暴力 / 「慰安婦」 / アジア・太平洋戦争 |
研究実績の概要 |
2020年度は全体としてコロナ禍による影響が大きく十分に成果を残せなかった。本プロジェクトに間接的に関連するものとしては、複数点刊行できた(「東南アジア史における「記憶」の問題――概要と論点――」『新たな和解の創出 : グローバル化時代の歴史教育学への挑戦』;「東南アジア(2019年の歴史学会――回顧と展望――) 」『史学雑誌』129(5) ;「植民地主義と向き合う――過ぎ去らない帝国の遺産――」、東京大学教養学部歴史学部会編『歴史学の思考法』岩波書店、2020年4月、95~112頁)他方、本プロジェクトの直接の成果としては、5月の韓国ソウルの研究会では、渡韓できず代読がなされた。9月にはスペインの国際学会で、フィリピン人2名とアメリカ人1名とパネルを組む予定であったが、コロナ禍により学会そのものが無期限の延期になってしまい、結局今後どのようになるのかは判然としない。 また、2018年に提出したフィリピンでのジャーナルに掲載が決定している論文については、結局刊行されなかった。2021年1月には連絡したときには、3月までには刊行されるとのことだったが、それが果たされなかった。現地社会への還元という意味では、現地社会でこそ刊行されるべきだと思うが、グローバルサウスの学術的なインフラが十分に整っていない社会への学知の還元の困難さを実感している。ただ、国際的なジャーナルというが、むしろ本科研の場合、欧米で刊行されるジャーナルではなく、ビザヤ地方のジャーナルに載せ現地社会に還元したほうが、対話が生まれ、より深い意義があると思われる。 このように具体的に形となった成果は乏しかったが、日本国内では研究を進めてきている。国会図書館憲政資料室には2020年7月に再開して以来、足しげく通い、ビザヤ地方の事件を中心に裁判記録等をひき続き調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍によりスペインでの国際学会で予算消化の予定が、それが流れてしまった。パネルを組み、フィリピン人2名の旅費も計上していたので、大きな額を残しておいたが、結局使い切ることができなかった。また、上述のように、現地のジャーナルにおける刊行は当初の予定でも計画していたのだが、刊行されていないので、2021年度への延長措置に応募することにした。
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今後の研究の推進方策 |
ビザヤ地方の研究者との今後も共同の研究は予定している。互いに研究関心が重なるところもあれば、相違するところもあり、2018年以降その困難を感じている。また、上述したように、本科研プロジェクトの目標の一つを現地社会への還元においていたので、ぜひとも論文が現地社会で刊行されるところまでは行きつきたく希望している。他方、理由はよく分からないが、今年後半になっても刊行されそうもないのだったら取り下げ、他のジャーナルに投稿しなおすことを考慮せざるを得ない。国際学会での共同パネルは、コロナ禍の折、先行きが分からず、本科研の期間内の開催は可能性が低い。今後の協力関係をどうするかも含め、なるべく今年度中に一度ビザヤ地方を訪れ、共同研究者と話し合いたい。また、「記憶の政治」については上述のように概要は示すことはできたが、現地社会(セブを予定している)の文脈から捉えなおしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
スペインでの学会発表ができなかったため。その後、研究活動のために一部使用した。
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