研究課題/領域番号 |
18K11777
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
東 悦子 和歌山大学, 観光学部, 教授 (00362856)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移民の歴史 / 保存と継承 / 展示と公開 / 連携の重要性 / 新たな価値 |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究実施計画にのっとり、カナダ移民を多数送出した和歌山県日高郡美浜町三尾において、当地に組織されたNPOとの連携により、当地に在する資料の確認や保存活動に着手した。当該年度の成果として、和歌山大学紀州経済史文化史研究所ならびに美浜町三尾にオープンしたカナダミュージアムにおいて展示会を開催することができた。またカナダ・バンクーバーおよびリッチモンドを訪れ、BC州和歌山県人会の集まりへの参加や関係者との面談に加え、当地でサケ漁に携わった日系人に関連する歴史施設を訪問し情報収集を行った。以上のことにより、今後の新たな連携の糸口を見出すことができた。 このような調査や実践を通して、カナダ移民送出の地のNPO法人や移民に関係する機関や団体との連携の強化や、学生ならびに一般の人々への成果の公開が実現したといえる。以上の点を踏まえ、令和元年にカナダを再訪して調査研究および当地の関係者との連携をさらに深めたい。 次に、当該研究のフレームワークとした「移民資料や人々の記憶をめぐる調査研究」→「デジタル化・目録化による保存」→「展示などによる発信」→「学生教育、和歌山県民や海外日系人へ歴史の継承、新たな情報の掘り起し」というサイクルをほぼ達成することができた。 最後に、本研究の重要な意義の一つは、消失の危機にある移民の記憶や遺物に光を当てる作業であった。これまで家庭で保管されていた遺物が展示によって、多数の目に触れることにより、移民の歴史についてほとんど知らなかった世代が、その歴史を伝えていくことの必要性を感じるきっかけとなり、現在も移民した人々の記憶を保持している住民の記憶の掘り起しや資料の提供にもつながったと考える。このような波及効果とともに、家庭に大切に保管されてきた遺物に、移民資料としての価値が確認されることにもつながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに進んだが、資料のデジタル化・目録化において時間と人材不足のため、すべての資料のデジタル化・目録化を完了することができなかった。 前述のとおり、全資料のデジタル化・目録化がかなわなかったため、リーフレットの発行を翌年度に延期した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は特に資料のデジタル化・目録化に集中する予定である。 まず初年度の計画であった美浜町三尾地区からのカナダ移民に関連する資料のデジタル化・目録化の完了を目指し、リーフレットを発行する。 加えて2年目の計画通り、和歌山県紀の川市西大井周辺からの北米移民に関する資料のデジタル化・目録化の完了を目指す。後者は、すでに数年前から、当地の移民調査を行っている団体と連携していることもあり、両地域の資料のデジタル化・目録化を遂行することは可能であると考えている。 当初の計画で予定していなかったが、美浜町三尾地区だけでなくカナダの関係者との連携を強化し研究を深めるため、カナダ再訪を計画したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由①移民資料のデジタル化・目録化を依頼するに適した人材が不足していたため、人件費・謝金に残額が生じた。人材育成をしつつ、翌年度の人件費・謝金に充当したい。 また、その一部を海外調査に充当したい。 理由②移民資料のデジタル化・目録化が完了しなかったため、リーフレットの発行を次年度に延期した。そのための印刷費を翌年度分として請求した。
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