研究課題
本年度は、昨年度に実施した世論調査(2019年イラク世論調査)のデータを整理し、昨年度に実施公開した単純集計にもとづいてデータの前処理を行い、計量分析をおこなうことによって、国家と政府に対する信頼度を解析した。その結果は、複数の査読付きの投稿論文に加え、国際学会での報告、さらに単著として発表し、高い評価を得た。これらの成果は、当初の目的は達成された。それに加え、本年度の主たるテーマであったトランスナショナルなネットワークやアクターの実態についての分析を進めた。より具体的には、部族の国境を超えた繋がりや、シーア派民兵集団である人民動員隊とイラン革命防衛隊や宗教界とのネットワークの実態を、主として新聞報道のデータベースを利用し、イランなどの周辺国のインフォーマントとオンラインで聞き取り調査を行うなどして、明らかにした。これによって、紛争後の国民形成や国家形成において、周辺諸国のアクターがどのように影響を与えたかを分析する基礎を構築できたとの見解を提示した。本年度の研究成果は、本研究課題全体において、きわめて重要な位置づけにあり、研究全体の進展を後押しするものであった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の想定通りの結果がデータから判明し、分析結果の論文化が進んだため。なお、すべての研究が、当初の計画通りに進んでいる。
これまでのすべての分析結果やデータを総合し、国家に代わってトランスナショナルなアクターやネットワークが人々のナショナル・アイデンティティの形成にいかなる影響を与えているかを分析し、とくに既存の国家とは異なる国家観に基づくナショナリズム形成のプロセスを見ることで、国民形成の動態を明らかにする。
コロナ禍で国内研究会や学会がオンラインとなったため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
末近浩太編『シリア・レバノン・イラク・イラン』
巻: 0 ページ: 97-119
酒井啓子編『グローバル関係学とは何か』
巻: 1 ページ: 168-190
末近浩太・遠藤貢編『紛争が変える国家』
巻: 4 ページ: 104-124
Keiko Sakai and Philip Marfleet eds., Iraq after the Invasion: People and Politics in a State of Conflict
巻: 0 ページ: 153-171
アジア経済
巻: 61 ページ: 2-27
Journal of Population and Social Studies
巻: 28 ページ: 1-26