本研究は、イラクを事例に、ポスト紛争期にみられる国民形成(nation building)のプロセスを動態的・包括的に明らかにすることを目的として実施された。 前年度までに、教科書分析によって国民統合のためにどのような政策が行われたのかを分析し、国民統合のシンボルについても明らかにした。また、2019年実施の世論調査のデータを計量分析にかけて、国民統合の進み具合についても分析してきた。 こうした分析を統合し、本年度は、国家に代わってトランスナショナルなアクターやネットワークが人々のナショナル・アイデンティティの形成にいかなる影響を与えているかを分析し、とくに既存の国家とは異なる国家観に基づくナショナリズム形成のプロセスを見ることで、国民形成の動態を明らかにした。
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