研究課題/領域番号 |
18K11782
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
大庭 千恵子 広島市立大学, 国際学部, 教授 (10256026)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 北マケドニア共和国 / EU加盟交渉の開始決定 / 国民国家 / 複数言語主義 |
研究実績の概要 |
2005年にEU加盟候補国と認定された旧ユーゴスラヴィア・マケドニア共和国は、「マケドニア」名称をめぐり隣国ギリシャとの国名争議を抱えていたが、2018年の歴史的合意(プレスパ合意)に基づき、2019年に国名を「北マケドニア共和国」と改称し、国際組織への参画においてギリシャの支持を得る道筋がたてられた。ギリシャとの国名争議の妥結は、2020年3月には、同共和国独立以後の外交課題のひとつであったNATO加盟の実現に結びついた。しかしながら、本研究課題のEU加盟に向けては、中・東欧諸国のEU加盟以後、EU側においてさらなる新規加盟国拡大の優先度は低下しており、安定化・連合プロセス(SAP)プロセスを維持しつつも、EU加盟交渉プロセスは鈍化するという厳しい状況にある。そこに、2020年度は新型コロナウィルス感染症拡大による、人的・経済的・社会的影響が大きくのしかかることとなった。こうした状況を踏まえ、2020年度は以下の2点において研究活動を実施した。 1.2019年度に実施した現地調査を踏まえ、国名と同様に同共和国の「国民国家」としての在り方に絡む課題のひとつ、複数言語の公用語化と課題について、資料分析を実施したうえで論文を執筆し、公表した。 2.新型コロナウィルス感染症拡大のため現地調査は次年度以降に延期したが、2018年に公表された欧州委員会による西バルカン戦略、2020年に見直された拡大手続きの内容、2020年3月EU理事会が北マケドニア共和国とアルバニアとのEU加盟交渉開始を決定した経緯、これらと連動した北マケドニア共和国における「法の支配」分野における諸改革の進展と課題等について、資料分析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、2019年度に実施した現地調査に基づく資料分析に基づき、北マケドニア共和国の国民国家変容に係る複数言語の公用語化問題について、論文執筆を行い、これを公表した。 また、同論文執筆過程において、隣国ブルガリアが同共和国のEU加盟交渉にあたって、ギリシャとのプレスパ合意で明記された「マケドニア語」ではなく別の表現を用いることを条件として提示するなどの新たな動きがあり、2021年度にむけた研究課題が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、EUによる西バルカン諸国戦略を踏まえ、北マケドニア共和国における「法の支配」に係る諸改革について、論文を執筆する。 また、2020年度の研究成果を踏まえ、北マケドニア共和国とブルガリアの関係について、とくに「マケドニア語」の評価および歴史認識に係る専門家委員会の動向に着目しつつ、引き続き情報取集を行う。 ただし、2020年度の新型コロナウィルス感染症拡大の影響は大きく、当初2021年度秋に予定していた現地調査の実施は、2022年度以降にずれ込む可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として計上した文献購入費の差額分が若干発生したが、次年度の文献購入費に充てる予定である。
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