本研究はポスト紛争期にあるミャンマー・カレン州農村部に暮らす障害者とその家族を研究対象とし、以下の2つを目的とした。一つは「その生活実態と生活ニーズを明らかにすること」であり、もう一つは「その支援において必要な内容と効果的方法を検討すること」である。 以上の目的を達成するため、本研究では混合研究法を取り、次の2つの調査を実施した。つまり、「カレン州内の3村723世帯の全戸訪問調査による障害者の生活実態に関する量的データの収集」及び「対象地域在住の障害者とその家族10名への半構造化面接による質的データの収集」である。 結果として、量的研究からは、「非障害者と比較し障害者は教育・職業面で社会参加の制限が顕著である」「一方、障害者は宗教資源や難民キャンプ資源など代替資源の活用によって社会生活上の制限の軽減を図っている」「その上でなお、障害男性に比して障害女性で社会参加の制限が顕著だが、当の障害女性自身はその自覚が薄い」などの生活実態が明らかになった。また、質的研究からは、「セイフティネットとしての叔父叔母・甥姪」「生計資源としてのタイ」「近隣住民との両価的関係」「多面的・重層的な支援資源としての宗教」などがカレン州農村部の障害者の生活実態を語るキーワードとして抽出された。更に、これらの生活実態に関する調査結果から、今後の支援の方向性として「障害女性のための取り組み」「近隣住民への働きかけ」「宗教資源との連携」「多彩な選択肢の維持」などの必要性が明らかになった。 研究成果は、研究協力団体と共有し現地での支援活動に活用されただけでなく、24th Rehabilitation International World Congressや18th World Federation of Occupational Therapists Congressなど複数の国際学会において広く共有された。
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