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2019 年度 実施状況報告書

現代ドイツにおける抗議形態の変遷と運動の質的変容に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K11787
研究機関中央大学

研究代表者

井関 正久  中央大学, 法学部, 教授 (20343105)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードドイツ抗議運動 / 68年運動 / 旧東ドイツ市民運動 / 右翼ポピュリズム
研究実績の概要

本研究はドイツにおける左翼と右翼の抗議スタイルの変遷とその過程で生じた両陣営間の相互作用、および運動の社会への影響という問題について、新左翼系抗議運動の出発点と位置づけられる68年運動まで遡り、現在のSNSを駆使した新しいタイプの抗議運動までを視野に入れて、実証的に取り組むものである。本研究は従来の左翼運動中心の社会運動研究にはなかった新たな視点を与えるものになると期待できる。
2019年度は、東西ドイツ時代の抗議運動および現在ドイツで展開されている右翼ポピュリズムの運動について幅広く資料・情報の収集をおこなった。夏季休業中にはドイツにわたり、一次資料の収集と聞き取りをおこなった。ハンブルク社会研究所(HIS)資料館で西ドイツの1960年代の学生運動に関する一次資料を、リュヒョウにあるゴアレーベン資料館で西ドイツの1970年代以降の原子力施設反対運動に関する一次資料を収集した。リュヒョウではさらにリュヒョウ・ダンネンベルク郡環境保護市民運動団体のトーベン・クラーゲス氏、環境問題に詳しい左翼党元連邦議会議員ヨハンナ・フォース氏に聞き取りをおこない、70年代から現在に至るまでの運動の詳細について伺った。また、ハンブルクでは元68年運動家のトアヴァルト・プロル氏に当時の運動の詳細について伺った。
さらに、州議会選挙直前のドレスデンとその近郊の町リーザを訪れ、「ドイツのための選択肢」(AfD)ザクセン州議会議員カーステン・ヒュッター氏、およびAfD党首で欧州議会議員のヨルク・モイテン氏に聞き取りをおこない、右翼ポピュリズム政党として知られる同党の具体的活動内容や思想・方針、左翼抗議運動からの影響の有無などについて伺った。新興右翼ポピュリズム勢力の運動形態と選挙戦略というテーマは、未開拓の研究分野であるため、この聞き取りをもとに同テーマを考察していくことには大きな意義がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は、ドイツの抗議運動や急進勢力に関する専門図書・論文集・新聞雑誌を購入したほか、インターネットをとおして諸運動に関する最新情報を収集した。また、9月、10月にザクセン、ブランデンブルク、テューリンゲンの3州で州議会選挙があり、いずれの州でも右翼ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が躍進したことから、数多くの新右翼運動関連の論文や記事を収集できた。
一次資料については、夏季休業中にドイツで収集することができた。西ドイツ68年運動に関する最新の議論についてはハンブルク社会研究所(HIS)資料館で、1970年代から現在に至る原子力施設反対運動についてはリュヒョウにあるゴアレーベン資料館で収集した。ハンブルクとリュヒョウでは資料館を訪れただけではなく、一次資料を補うために、当時あるいは現在も活動する運動家や政治家にも聞き取りをおこない、運動の内側からの詳細な情報を得ることができた。
さらに、新右翼勢力の事例としてAfDをとり上げ、州議会選挙直前のドレスデンとリーザで同党ザクセン州議会議員カーステン・ヒュッター氏と、党首のヨルク・モイテン氏に聞き取りをおこない、選挙戦略のほか、「緑の党」との競合関係や左翼運動との類似点・相違点などについても情報を得ることができた。。
これまでの研究成果としては、論文「東ドイツ『平和革命』から30年 ― 元市民運動家の視点からみる1989年の遺産」が『思想』第1146号(2019年10月)に掲載され、さらに論考「右翼ポピュリズム政党AfDはなぜ旧東ドイツ地域で支持されるのか?」が『白門』(中央大学通信教育部編)第71巻冬号に掲載された。
また研究報告としては、6月3日に早稲田大学法学部総合講座「ドイツ語圏を知る」において、「『ベルリンの壁』崩壊から30年 ― 東ドイツ『平和革命』から何が残ったのか」と題する報告をおこなった。

今後の研究の推進方策

今年度も引き続き、ドイツにおける左翼・右翼両陣営の思想や抗議運動および急進勢力に関する専門図書・論文集・新聞雑誌を購入するほか、インターネットやSNSを駆使して諸運動に関する最新情報を収集する。
それとともに、1年目、2年目にドイツで収集した一次資料をもとに、戦後ドイツにおける左翼運動の急進化過程における抗議スタイルの変遷、および今日の左翼運動にみられるその遺産についてまとめ、そこからどのようなプロセスを経て新右翼に抗議形態や戦略が吸収されていったのかを考察する。
そのためにさらなる追加資料の収集が必要であり、8月から9月にかけて、ふたたびドイツにわたることを計画している。旧西ドイツの左翼運動関連の資料は、ハンブルク社会研究所(HIS)資料館、およびベルリン自由大学附属議会外反対派・社会運動資料館で、旧東ドイツ体制批判運動・民主化運動関連の資料は、ベルリンにあるロベルト・ハーヴェマン協会資料館で、そして新右翼運動関連の資料と最新情報は、ふたたび右翼ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢」(AfD)で収集する予定である。
帰国後は新たに収集した資料も含めて、論文にまとめ上げる予定である。

次年度使用額が生じた理由

図書・雑誌の購入費、さらにドイツへの研究旅費が、当初予定していたよりも安い金額で済んだため、次年度使用額が生じた。おもに追加資料の収集のための研究旅費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 東ドイツ「平和革命」から30年 ― 元市民運動家の視点からみる1989年の遺産2019

    • 著者名/発表者名
      井関正久
    • 雑誌名

      思想

      巻: 1146 ページ: 48-68

  • [雑誌論文] 右翼ポピュリズム政党AfDはなぜ旧東ドイツ地域で支持されるのか?2019

    • 著者名/発表者名
      井関正久
    • 雑誌名

      白門

      巻: 71 ページ: 98-101

  • [学会発表] 「ベルリンの壁」崩壊から30年 ― 東ドイツ「平和革命」から何が残ったか2019

    • 著者名/発表者名
      井関正久
    • 学会等名
      早稲田大学法学部総合講座「ドイツ語圏を知る」
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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