研究課題/領域番号 |
18K11789
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
平島 みさ (奥村みさ) 東洋大学, 社会学部, 教授 (40296942)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シンガポール / 文化遺産 / 文化継承 / エスニック・アイデンティティ / エスニシティ / プラナカン / 多文化教育 / 商品化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語化がシンガポールにおける歴史観の創造と伝統文化の継承に及ぼしている影響を文献調査と聞取り調査によって分析し、諸問題を明らかすることにある。具体的には2つの視点からのアプローチを試みる。(1)政府の歴史教育・文化遺産政策との関係からのアプローチ、(2)個人と社会変動との関係からのアプローチである。 a.(1)のアプローチからの成果:【論文 年度内刊行済】「シンガポールの文化遺産観光戦略におけるプラナカン文化の表象と商品化」『社会学学部紀要第58-1号』 2020 東洋大学社会学部所収:pp.103~116。本論では、シンガポールの文化遺産観光振興においてプラナカン有形文化が文化資源として戦略的に利用されている表象と商品化の実態を明らかにし、その要因を析出した。商品化の事例には日本の市場との関連も取り上げた。b.(2)のアプローチからの成果:【論文 年度内刊行済】「シンガポール・プラナカンのエスニック・アイデンティティと文化継承」『アジア文化研究所年報第55号-2020-』2020 東洋大学アジア文化研究所所収:pp.1~22。本論では,シンガポールのプラナカンの人々にインタビュー調査を実施し、彼らのエスニック・アイデンティティと文化継承について、文化の真正性についての考え方を明らかにし,さらには現在進行中の新しい文化継承のかたちも考察した。c.(1)からのアプローチの成果:【論文 年度内刊行済】「シンガポールにおける国民統合政策としての多文化教育―中等学校教科書分析を中心に―」『人間科学総合研究所紀要第23号』2020 所収:pp.109~129。本論では,多民族国家シンガポールにおける多文化主義政策の特徴を考察し,シンガポールの中等教育の現場で,特に多文化共生を教える実践的アクティブ・ラーニングに使用している教科書を事例に取り上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年に本研究の申請書を作成した当初は、今年度はシンガポールへ現地調査に行く予定であったが、COVID-19の世界的感染拡大のため、所属大学から海外出張は全て禁止となってしまった。それゆえ、科研費に計上していた旅費も次年度へ繰り越すこととなったが、今年度は過去5年間にシンガポールで現地調査して収集した資料を整理し、まとめ、またウェブ上で統計等をアップデートしながら、論文を3本執筆し、年内に刊行することができた。 以下、今年度執筆・刊行した論文3本を記す。 1.【論文 年度内刊行済】「シンガポールの文化遺産観光戦略におけるプラナカン文化の表象と商品化」『社会学学部紀要第58-1号』 2020 東洋大学社会学部所収:pp.103~116。 2.【論文 年度内刊行済】「シンガポール・プラナカンのエスニック・アイデンティティと文化継承」『アジア文化研究所年報第55号-2020-』2020 東洋大学アジア文化研究所所収:pp.1~22。 3.【論文 年度内刊行済】「シンガポールにおける国民統合政策としての多文化教育―中等学校教科書分析を中心に―」『人間科学総合研究所紀要第23号』2020 所収:pp.109~129。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は過去3年間の調査・研究を総括する。そのために、春学期から資料のまとめと並行して執筆を開始し、7月には日本国際文化学会第20回全国大会(於:近畿大学)で研究発表を実施することが確定している。秋学期に渡航可能となればシンガポールに1週間ほど出張し、データの情報の更新、事実確認などを実施し、これまでの研究成果をまとめて刊行したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には新型コロナウィルスの感染拡大が世界規模のパンデミックとなり、所属大学から海外出張を禁止されたため、予定していたシンガポール出張が実施できなかった。それゆえ、計上していた海外旅費、現地でインタビュー予定の方々への謝金等、出張に派生する予算を使用できなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度後半にはワクチン接種も進み、海外出張が可能となる可能性があるので、出張が可能になれば、当初予定した2020年度の出張計画を実施し、繰り越した予算を使用する。所属大学から海外渡航不可が決定となった場合は、その時点で国内における比較研究調査に切り替え、国内出張旅費と海外からの図書資料購入代、取り寄せの航空便代、リモート調査のためのPC周辺機器の充実などに使用する。
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