研究課題/領域番号 |
18K11789
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
平島 みさ (奥村みさ) 東洋大学, 社会学部, 教授 (40296942)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シンガポール / 文化遺産 / 文化継承 / エスニック・アイデンティティ / エスニシティ / プラナカン / 多文化教育 / 商品化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語化がシンガポールにおける歴史観の創造と伝統文化の継承に及ぼしている影響を文献調査と聞き取り調査によって分析し、諸問題を明らかにすることにある。具体的には2つの視点からのアプローチを試みている。 すなわち、(1)政府の歴史教育・文化遺産政策との関係からのアプローチ、(2)個人と社会変動との関係からのアプローチである。 令和2年度は(1)からのアプローチの研究成果を学術論文として2本、(2)からのアプローチの研究成果を学術論文として1本刊行し、(1)からの学会報告を学会報告を1回実施した。令和3年度は(1)からのアプローチで学会報告を1回実施した。 令和3年度は前年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大のため、(2)のアプローチ関連のインタビュー調査ができず、主に(1)のアプローチ関連の資料収集・調査に研究の重点を置いた。SNSでの動画、過去の展覧会、観光イベントに関する情報収集も開始した。(1)のアプローチ関連では、シンガポール国立博物館のウェブサイトに登録し、毎月(あるいは特別展)の博物館活動を追跡調査した。また、Peranakan Associationのウェブサイトにも登録し、Peranakanの人々がSNSのネットワークでグローバルにつながり、文化の保持・継承と共に新しい文化創造についても模索している状況をリアルタイムで追跡している。 新型コロナウィルス感染拡大のため、シンガポールでは日本と同様、現時点では観光客が入国できず、したがって現地の観光業も活動を停止している状況なので、文化遺産と観光政策の研究は進んでいない。ただし、令和4年4月からはシンガポール“with Corona”政策に舵を切り、国境を開き始めたので、令和4年度は現地で調査ができるのではないかと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に本研究の申請書を作成した当初は、平成30年度から令和2年度の3年間で研究期間が完結する予定であった。ところが令和元年度に新型コロナウィルスの世界的感染拡大のため、所属大学から海外出張はすべて禁止となってしまった。それゆえ、科研費に計上していた旅費も繰り越すこととなった。 今年度は「やや遅れている」と研究の進捗状況を自己評価したのは、新型コロナウィルスの世界的感染拡大という、研究代表者の能力を超える不可抗力により、令和2年度と令和3年度の2年間、シンガポールへ現地調査に行くことができておらず、現地の遺産文化局の文化政策立案者へのインタビュー調査や国立国会図書館での文献調査ができずにいるからである。 加えて、令和2年度はサバティカルであったため、令和3年度に初めてオンライン授業、オンデマンド授業を実施することとなり、1回の授業のPPTや動画作製、学生たちのリアクションペーパーを読みコメントを書くなどの作業に、通常の授業の3倍くらいの時間をかけることとなり、それが研究時間確保に少なからず影響を与えたためである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度こそは、シンガポールで現地調査を実施したい。シンガポールは4月から外国人に国境を開き、ビジネス関係の往来は開始しているようである。春学期はこれまで収集した資料の整理、分類を行い、可能であれば夏期休暇中にシンガポールへ出張し、インタビュー調査、データ情報の更新、事実確認などを実施し、秋学期からは研究成果を執筆して、刊行したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には新型コロナウィルス感染が依然として拡大し、世界規模のパンデミックとなり、所属大学から海外出張を禁止されたため、予定していたシンガポール出張が実施できなかった。それゆえ、計上していた海外旅費、現地でインタビュー予定の方々への謝金など、出張に派生する予算を使用できなかったため、次年度使用額が生じた。 2022年4月からはシンガポールでは外国人の入国制限が緩和され、日本でも帰国後の隔離期間短縮化の傾向があるため、渡航が可能となれば、年度後半には当初予定していた出張計画を実施し、繰り越した予算を使用したい。今年度も海外渡航不可となった場合は、国内出張費と海外からの図書資料購入代、取り寄せの航空便代、リモート調査での謝金などに使用する。
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