研究課題/領域番号 |
18K11792
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
鈴木 弥生 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80289751)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バングラデシュ / ニューヨーク市 / アメリカ合衆国 / 移民労働者 / 第一世代 / 第二世代 / 女性 / 貧困 |
研究実績の概要 |
2019年9月5日から7日まで、スウェーデンのストックホルム大学で開催されたカンファレンス“Social Citizenship, Migration and Conflict- Equality and opportunity in European welfare states”(THE EUROPEAN NETWORK FOR SOCIAL POLICY ANALYSIS) に参加した。これに続いて、同市内で移民労働者の参与観察を実施し、アフガニスタン、モロッコ、イラン出身者からの聞き取り調査も行った。そのうちの1名の案内で、イスラム教徒が集まる市内のモスクを訪問した。 その後ノルウェーのオスロに移動し、ここでも移民労働者の参与観察および聞き取り調査を行った。回答者は、複数のインド出身者(IT関連の技術者)とソマリア出身者(第二世代を含む)のほか、アフガニスタン、ネパール、マレーシア、フィリピン、タイ、キューバ、イラン、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナの各出身者であった。 また、ソマリア出身者によるコミュニティを訪れているが、そこで調査に協力してくれた人々は、全員がイスラム教徒であった。彼女・彼らは、祖国の内戦を理由としてオスロに移住しているが、高齢の祖父母を残してきている人もみられる。同コミュニティには移民が経営する店があり、祖国の伝統工芸品や日用品が並べられている。モスクには、金曜日になると多数の男性が集まり祈祷が行われているが、第二世代の高校生(女性)たちも友人同士で祈祷に訪れている。これら女性たちの案内で訪問した同モスク内の二階には女性専用の広いスペースがあり、祈祷を終えると悩みを共有したり話をしたりすることができる。 ここでの調査を通して、ニューヨーク市で行ってきた現地調査との比較研究の可能性がみえてきた。なお、現在も文献を収集(購入)して先行研究の分析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の研究の推進方策は以下のとおりであった。「ニューヨーク市において先行研究と資料の収集およびバングラデシュ出身の第一世代および第二世代双方から聞き取り調査を実施する。また「国際労働移動は二国間の独立した現象ではなく、グローバルな労働の流れの一環として位置づけられる」(森田桐郎『国際労働移動と外国人労働者』同文館、1994年、25頁)という指摘から、可能であれば、バングラデシュ以外の出身国・地域にも焦点をあて、先行研究や資料の収集、実態調査を行う。各国・地域での治安が懸念される場合には、適宜調査日程を変更する」。 これに基づき、2020年3月、ニューヨーク市を訪問して、バングラデシュ出身者の第一世代および第二世代双方から聞き取り調査を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスによる影響から中止している。夏季休暇中、オスロでの調査を通して、ニューヨーク市における移民労働者との比較研究の可能性もみえてきたものの、ニューヨーク市での調査を中止せざるを得なかったことから、研究成果は十分であるとは言えない。したがって、当該年度が初めてとなるが、やや遅れているということになる。なお、文献や資料の収集には成果がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
1.アメリカ合衆国での調査が可能な場合 新型コロナウィルスの収束を待って、ニューヨーク市での調査および先行研究と資料の収集を再開する。当初の目的に沿って、ニューヨーク市で生活するバングラデシュ出身の第一世代および第二世代双方から聞き取り調査を行う予定である。 2.アメリカ合衆国への入国もしくは現地での調査が困難な場合 (1) ニューヨーク市の大学に勤務する教職員の協力を得て、電子メール等を活用してアンケート調査を行う予定である。また、最新機器を活用して、適宜ミーティングを行う。 (2) 渡航が可能であれば、バングラデシュ出身者が移住しているフィンランドやタリン(2019年3月、事前調査済み)での調査を検討する。また、森田(同上)の指摘から、可能であれば、バングラデシュ以外の出身国・地域にも焦点をあて、先行研究や資料の収集、実態調査を行う。なお、何れの場合も、各国・地域での治安が懸念される場合には、適宜調査日程を変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響によるニューヨーク市での実態調査中止に伴い、当初予定していた旅費への支出がなくなったことから、次年度使用額が生じた。これらについては、2020年度の現地調査において必要となる旅費、宿泊費と日当に使用する予定である。2019年度のニューヨーク市以外での調査(前述)は学内研究費を活用していたが、現地で移民労働者に関する実態調査を行うための準備が整ったことから、各国・地域で調査を行う場合にも旅費、宿泊費と日当を支出する予定である。 また、最新機器を駆使して現地と連絡を取り合うことも想定しているため、その場合、大型パソコンのほか、マイク、カメラ、USB等の付属品、大型プリンタ等への支出を予定している。
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