・最終年度の研究成果:2023年2月に行われた大統領選挙では、ディアスポラが支持した候補者が二大政党に伍して得票を伸ばし、1999年の民主化以後初めて二大政党体制を破る大躍進を果たした。これに対するディアスポラの影響力は限定的であったものの、この結果が今後の国内政治に大きな影響を与えることは間違いないと思われる。この選挙に関する研究成果は日本アフリカ学会や人文地理学会等で発表した。 ・研究全体を通した成果:2018年に3カ年の計画で開始した本研究はコロナ禍のためその期間を2カ年延長し、さらに研究方法も聴き取り中心の調査から書誌的研究へと変更せざるを得なくなった。これに合わせ研究対象も分離独立運動を行うディアスポラに限定せずナイジェリア人ディアスポラ全般に広げることとし、彼らと国内政治との関わりについて調べることにした。 ナイジェリア人ディアスポラは2000年以降その数が急増し、送金等を通して国内政治への影響力を強めてきた。その存在を無視できなくなってきた政府は検討委員会を作り、その委員会が2016年に「ディアスポラ問題に関する国家政策(案)」を発表した。この案で示された政府の対ディアスポラ対策の姿勢には、彼らが持つ資本や技術の国内への導入は歓迎するが彼らが持つ社会的資本の導入は望まないとする二面性が見られた。政府はディアスポラが政治的民主主義や人権思想を国内に持ち込むことを恐れていた。 2019年に再選され2期目に入ったブハリ(Muhammadu Buhari)政権は、政治の民主化や人権擁護を掲げる反政府運動がディアスポラと連携することを恐れ、それを阻止するために様々な規制を加えた。さらに民族独立運動を主導するディアスポラに対してはその活動を徹底的に抑え込んだ。ブハリ政権とディアスポラとの関係が緊張を孕む中で2023年の大統領選挙を迎えることになった。
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