研究課題/領域番号 |
18K11797
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
近藤 伸二 追手門学院大学, 経済学部, 教授 (40735023)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 台湾の民主化 / 独裁体制の打破 / 移行期の正義 / 日台の絆 |
研究実績の概要 |
2019年度までに、台湾の民主化に大きな役割を果たした「台湾人民自救運動宣言事件(自救宣言事件)」について、当事者である彭明敏・元台湾大学教授をはじめ、多くの関係者にインタビューし、詳細な内容を聞き取った。台湾の国家発展委員会档案管理局などで裏付けとなる公文書を入手し、それまで知られていなかった事実も発掘した。 本研究では、彭明敏氏と長年の友人であり、かつライバルでもある李登輝元台湾総統との関係や友情、2人の比較なども重要なテーマとなっている。ともに台湾を代表するエリートでありながら、彭明敏氏は「国家反逆者」として20年以上も海外亡命を強いられ、李登輝氏は総統として民主化を進め、世界から「ミスター・デモクラシー」と称賛されたが、互いに相手をどう見ているのかがポイントとなる。 彭明敏氏の李登輝氏に対する評価は、3年間にわたるインタビューで何度も問いただしていたが、その李登輝氏が2020年7月30日に97歳で死去したため、李登輝氏の死去を受けて改めて確認した。また、蔡英文総統が1月11日の総統選挙で再選を果たし、5月20日から2期目の政権がスタートしたが、彭明敏氏に蔡英文総統の政権運営に対する評価についてメールで質問し、回答を得た。 さらに、「自救宣言事件」で彭明敏氏の海外脱出に主要な役割を果たした日本人の宗像隆幸氏が2020年7月6日に83歳で死去したことから、遺族に連絡したところ、2019年暮れに宗像氏が台湾を訪れて彭明敏氏と対面していたことを確認した。宗像氏は「自救宣言事件」で彭明敏氏と交わした手紙を出版することを希望しており、彭明敏氏も同意した。宗像氏の死去を受け、この作業は夫人が引き継いでいくことになった。 状況変化に伴うこれらの新たな事実も含め、2017年度から4年間にわたる研究成果をまとめた単行本が2021年5月に出版される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度までに、「自救宣言事件」に関わった台湾と日本の関係者にはすべてインタビューすることができた。当人の彭明敏氏には3年間にわたり、毎年長時間インタビューを行い、貴重な証言を得た。謝聡敏氏には2017年8月にインタビューを行ったが、2019年9月に死去した。宗像隆幸氏には2018年3月にインタビューを行ったが、2020年7月に死去した。それぞれインタビューの内容は歴史的な証言となっている。 インタビューを裏付ける資料や新たな事実を解明するのに役立つ資料も、台湾と日本で数多く入手した。歴史的な写真も集まった。2020年度は新型コロナ感染拡大で台湾出張はできなかったが、すでにインタビューや資料収集は終えていたので、それらを基に執筆に専念し、2021年5月の単行本出版も決まった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年5月に研究成果をまとめた単行本を出版するので、それに関連して学会発表や講演、媒体への寄稿などを行っていく。すでに、4月に関西日中関係学会で、研究成果について報告した。6月には大阪日台交流協会で講演することが決まっている。その他、専門家向け、一般向けを問わず、機会をとらえて研究成果を外部に発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大により、計画通り研究活動を行うことができなかったため、1年間延長した。2021年度は研究成果をまとめた書籍を出版する予定なので、それに関連した講演会や討論会参加などに伴う資料購入費や出張費、通信費などに研究費を充てる計画を立てている。
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