研究課題/領域番号 |
18K11802
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
朴 仁哲 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (90752717)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 朝鮮人「満洲」移民 / 多文化共生 / 東アジア / 地域研究 / 語り部 / 世代 / 越境 / 平和 |
研究実績の概要 |
2021年度は、キーワードを「多文化共生」「東アジア」「地域研究」「語り部」「世代」「越境」「平和」と定めて研究を進めた。期間中はフィールドワークを2回行った。12月上旬には、長野県でフィールドワークを行い、満蒙開拓平和記念館と飯田歴史研究所、そして泰阜村を訪ね、資料収集を行った。それに、長野県在住の「満洲」移民体験者3人にインタビューを行った。12月下旬には、大阪府堺市内の私設教科書総合研究所を訪ね、資料収集を行うほか、2日間にわたって、私設教科書総合研究所共同主宰者で、「満洲」移民体験者である吉岡数子さんにインタビューを行った。その他、同じく北海道在住の朝鮮人「満洲」移民体験者の子孫Zさんにインタビューを2回行った。 研究成果を市民講座と公開講座、そして所属研究会で報告した。具体的には、NPO法人さっぽろ自由学校「遊」で、「越境する人と文化を通して読み解く東アジア」というテーマで、市民講座を行っている。2021年5月から月に1回のペースで行っており、2021年度はのべ11回行った。北海道日中友好協会主催の公開講座(2021年11月26日)で、「東アジアの多文化共生について考える:越境する食・音楽・ヒトを手がかりに」というテーマで報告した。社会理論・動態研究所主催の精神構造研究会(2021年11月28日)で、「語り部活動における自己エスノグラフィーの試み:人の移動と移民研究を手掛かりに」というテーマで報告した。「将来世代の平和のために:世代間平和を語り合う集い」(2022年3月23日)で、「多元的自己を生きること」というテーマで報告した。 その他、下記の研究論文の翻訳を行った。 北島順子・吉岡数子著、朴仁哲翻訳「九一八事件「中国侵略」検証フィールドワーク・ドキュメント・展示・集会活動の記録」瀋陽「九・一八歴史博物館」主催「九一八事変90周年国際学術シンポジウム」論文集。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4年目にあたる2021年度は、研究実施計画に沿い、海外でのフィールドワークを行う予定だった。しかし、新型コロナが収束していなく海外渡航が依然と難しかったため、中国と韓国でのフィールドワークはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
朝鮮人「満洲」移民の研究は、戦争・植民地・移民をめぐる学際的な研究となる。ゆえに研究を深めるためには、学際的な知識と研究方法が必要になる。2022年度は、次のような研究計画を立てて研究を進める。第一に、日本人の「満洲」移民体験者へのインタビューを行う。朝鮮人の「満洲」移民体験者の生活史を多角的に分析するため、同時代を生きた日本人にもインタビューを行う必要がある。新型コロナが収束したら、大阪府でフィールドワークを行う。第二に、聞き取り調査において、25人の朝鮮人「満洲」移民体験者(以下、移民体験者)の子孫が日本に留学したことがあり、また現在留学していることが分かった。それは、インフォーマント全体の4人に1人に相当する。かつての植民地出身者の子孫が旧宗主国に還流するという移民研究は、東アジアにおいては、まだ萌芽的な研究に属する。今後の研究においては、戦争と植民地を体験していない移民体験者の子孫が、戦争問題と植民地問題をどうとらえているのか、また、戦争と植民地を体験していない日本の戦後世代が、戦争問題と植民地問題をどうとらえているのかについて聞き取りを進める。第三に、調査データの分析と論文執筆を行い、また所属の学会や研究会、そして市民講座などにおいて研究報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
オミクロン株の感染が急拡大したため、2022年3月に予定した大阪府でのフィールドワークができなかった。そのため、補助事業期間が再延長することになった。オミクロン株が収束した後、大阪府でフィールドワークを行う。
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