2022年度は、キーワードを「多文化共生」「東アジア」「地域研究」「語り部」などと定めて研究を進めた。本研究では、朝鮮人「満洲」移民研究に軸足を置きつつ、帝国日本を移動した朝鮮人「満洲」移民体験者及び日本人「満洲」移民体験者の記憶を辿りながら、移民体験者の戦争の記憶の継承について考察した。本研究の意義は、戦争の社会学的研究にとって、また今後における朝鮮半島と日本の人々の共存にとって、示唆を与えるものである。期間中は長野県で1回フィールドワーク(2022年9月8日から14日まで)を行った。第19回飯田市地域史研究集会「満洲移民――下伊那から再考する」に参加したほか、「満洲」移民に関連する資料を収集し、日本人の「満洲」移民体験者3名にインタビュー調査を行った。また、2023年3月2日、北海道在住の中国残留婦人にもインタビュー調査を行った。研究成果を所属研究会と市民講座で報告した。具体的には、NPO法人さっぽろ自由学校「遊」で、「越境する人と文化を通して読み解く東アジア――地域から多文化共生を考える」というテーマで、市民講座シリーズを行った。市民講座シリーズは、2021年5月から月に1回のペースで行っており、2022年度はのべ12回行った。それぞれの講座日は、2022年(4月19日、5月17日、6月21日、7月19日、8月16日、9月20日、10月18日、11月15日、12月20日)、及び、2023年(1月17日、2月21日、3月21日)である。また、2022年7月7日、NPO法人さっぽろ自由学校「遊」主催の市民講座で、「東アジアの記憶の場としての尹東柱(ユン・ドンジュ)」というテーマでも報告した。そして、2022年9月28日、社会理論・動態研究所主催の研究会「キーワードセッション」で報告した。それに、研究論文1本をまとめたほか、他の研究者の研究論文を日本語から中国語に翻訳した。
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