研究課題/領域番号 |
18K11803
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤野 彰 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 名誉教授 (60646404)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 中国共産党 / 中国革命 / 毛沢東 / 井岡山革命根拠地 / 族群 / 客家 / 袁文才 / 王佐 |
研究実績の概要 |
令和3年度までの研究の成果として書下ろしの原稿を完成させ、令和4年1月、単行本『客家と毛沢東革命――井岡山闘争に見る「民族」問題の政治学』(日本評論社)を刊行した(紙媒体と同時に電子書籍版も発行)。本書は全518頁で、目次の概要は以下の通りである。
序章「客家と革命」をめぐる検討課題/第一章 毛沢東と客家の邂逅――井岡山の「山大王」との同盟/第二章 パンドラの箱――土籍と客籍の永年抗争/第三章「土匪首領を殲滅せよ」――モスクワからの指令と井岡山の動揺/第四章 仕組まれた赤色テロ――土客籍矛盾の暴発/第五章 毛沢東の「不都合な事実」――袁王への対応の変化/終章 中国共産党政治とエスニック問題/注/引用・参考文献/事項・人名索引
本書の刊行により、客家問題を手掛かりとして中国共産党が革命闘争期に根拠地のエスニック問題をどのように理解し、政策に反映させたか、それはのちの民族理論にいかなる影響を及ぼしたかという歴史的、政治的経緯を実証的に解明できたと考える。これまで文化人類学分野に偏っていた客家研究を、中国革命史・中国共産党史とリンクさせ、新たな視点で中国共産党政治の断面を明らかにした点に本書の学術的価値がある。 本書の内容に関しては、研究者による書評で「『官方歴史学』の歪みを徹底した史料考証と緻密な分析により克服し、歴史の真実に迫ろうとする科学的姿勢」が評価された(『読売新聞』令和4年4月3日読書欄、評者=国分良成・前防衛大学校長)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで原稿の執筆・整理にかなりの時間と労力を費やしたが、令和3年度中に研究成果の一部を単行本の形で刊行できたことから、研究作業全体としてはおおむね順調に進行している。ただ、長期化するコロナウイルス問題の影響で、中国現地での追加の史資料調査などが実施できておらず、これをどうカバーするかという課題は残っている。
|
今後の研究の推進方策 |
井岡山革命根拠地期の「客家と革命」問題に一応の区切りがついたため、令和4年度は客家の集中居住地域である中央革命根拠地(中央ソビエト区)の「客家と革命」の実態解明に研究の重点を移す予定である。 特に中国共産党内における粛清の問題に焦点を絞り、共産党の「政治的暴力」がどのようなロジックで拡散し、負の政治的文化として形成・定着していくようになったのか、建国後の反右派闘争や文化大革命の暴力といかなる関連性があるのかといった問題を考察していく。引き続き史資料の発掘と徹底分析を通じて深みのある実証研究に取り組みたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、コロナウイルス問題が長期化しているため、令和3年度も予定していた中国現地調査を見送らざるを得なかったことが主たる理由である。今後の使用計画としては、研究遂行に必要な文献資料、文具等の購入に充てる予定である。
|